私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 谷川ニコ スクウェア・エニックス 既刊2巻
理想的な高校生活を描いていたが、現実は厳しかった。女子高生であるだけでモテるというのは錯覚であり、それどころか女子からも相手にされず、容赦なく訪れる寂しい日々。そんな毎日を過ごす女子高生、黒木智子は、夏休みを迎えて焦る。しかし、何も進展しない。他人と関わらずに7月を過ごしたり、親戚の子が来るからといって、妙に粋がってみたり、中学生の男の子達と花火…ではなくラブホを覗いたり、声優のイベントに参加して興奮してしまったりと、残念な毎日を積み重ねていくうちに、夏休みが終わる。
小中高生にとっては、夏休みも折り返しを迎えて、残すところ僅かというところだろうか。そんな時期に本作を読むと、本当に切なくなる。切なくなるが、単に「かわいそう」という気持ちだけにはならず、周囲の女子をビッチ呼ばわりする智子の発言に思わず笑ってしまったり、自分に話しかけてくる男子にどう対応していいかわからずに困惑する智子の姿が微笑ましく思えたりする。
中でも、偶然男子中学生と一緒に廃デパートの屋上でラブホを覗くことになってしまった話では、人と一緒に同じものを見ることの楽しさに感動する智子の姿を見て少しだけ胸が熱くなってしまった。
1人の寂しさを感じたことのある人なら誰でも、智子の魂の叫びに共感できる部分があるのではないだろうか。卑屈な態度や周りを小バカにした発言も、今の自分をどうして良いのかわからない、主人公の行き場のない気持ちゆえ。読んだ後に、微かな笑いと切なさが入り混じった気持ちになる。だけど、しまいには主人公に愛おしさを感じ、応援したくなってしまう。今回も、そんな思いを抱いたのだった。
ちなみに、巻末の作者のあとがきも必見。「高校の時の一部の人間以外のクラスメイトと野球部への憎しみを忘れず」って・・・ 智子の叫びは同時に作者の叫びでもあるのか。
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