アンの世界地図~It's a small world~ 吟鳥子 秋田書店 既刊1巻
16歳の少女アンは、金髪にロリータ服という外見だが、近所では「値引きのロリータ」「ビンボー姫」と呼ばれ、賞味期限が迫って値引きされたコンビニ弁当を買って生活する有り様だった。実は、家はゴミ屋敷で母親は酒浸りという境遇を必死に生きていたのだった。ある日、自分の大切な服を母親に破かれたことをきっかけに家出を決意し、徳島に住む祖母の家を目指した。しかし、肝心の祖母の住所が書かれた手紙を紛失し、途方に暮れているところを、謎の着物少女アキに助けられ、古民家に案内される。2人の少女の奇妙な同居生活がここに始まる。
1巻の山場は、何といってもアンがアキの育ての親のような存在であるマサじいと対峙する場面だ。家族は人生で初めて折り合いをつけることを学ぶ場だと主張するマサじいに対して、それは恵まれた家族のもとに生まれ落ちた者の見方であって、自分の子どもに関心を持たない親のもとに生まれた人間には当てはまらないと言うアン。アキのことを「はじめてのお母さん」と表現するアンの姿に、マサじいは折れてアンを家族として迎え入れるのだった。
アンのことを心から受け入れてくれるアキの包容力が、舞台となる徳島の大自然と合わさることで、壮大な優しさに包まれた物語になっている。素敵な世界観の物語はまだまだ始まったばかり。やがて明かされるであろうアキの秘密も気になるところだ。
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