瑠璃宮夢幻古物店 逢坂八代 双葉社 既刊1巻
ここは、美人店主、瑠璃宮真央が営む、静かな住宅街の片隅にある古物店。その店にやってくるのは、自分の心や人間関係に何か問題を抱えた人々である。悩みを抱えた人々に店主から勧められるのは、謎の古物。人間が特別な思いで使い続けた道具には、不思議な力が宿るため、その道具を手にした人間は、大きな力を手にする。しかし、力をどのように利用するのかは手にした人間次第である。人生を豊かにするも、破滅に追い込むのも、すべては使い方によるのだ。本書は、瑠璃宮と古物店に集まる人々の交流と、道具を手にした人間の結末を描く。
かつて本ブログでも熱心に取り上げた『魔法行商人ロマ』を彷彿とさせるストーリーだが、本作の方がさらにブラックな感じがする。登場人物の抱えている問題、道具の使い方を誤った者に与えられる恐ろしい結末など、やはり少年漫画の枠を超えているだけに、ワンランク上の怖さがある。
そして、本作の最大の特徴は、道具を手にした人物たち同士の交流である。1話ごとのオムニバス形式のように見える物語だが、話が進むにつれて、かつての登場人物やその関係者が現れ、関わりあうことで、物語が重層的になっているのだ。また、瑠璃宮真央の思想は、道具を手にした後の人生はまったくもって本人次第というものだが、道具の使い方も指導すべきと主張する人物である横溝ゆかりという人物も現れる。人間の際限ない欲望を叶えるための手段が、これらの不思議な道具だと思うが、そこに指導を入れることは正しいのか。好対照をなす2人の思想のぶつかり合いには、人間の幸せは誰が決めるのかという、根源的な問いがあるように思う。
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