NEWS×it くろは スクウェア・エニックス 既刊1巻
平日22時から放送中の報道番組、「NEWS×it」のメインキャスター武藤玲子が繰り広げる数々の放送事故レベルを軽く超えた失態に対して、同じ番組でキャスターを務める鳩谷三郎がツッコミを入れるというギャグをネタにした漫画。「社会派風報道ギャグ」の名に相応しく、決して社会派を気取った作品ではなく、ただただ日々のニュースを伝える際の文言や伝え方に変化を凝らしてギャグに展開していくという作風である。
決して風刺に満ちた社会派の漫画とは言えないのだが、ニュース番組も立派なギャグの舞台たり得ることを示してくれる良作だと思う。少なからぬ不謹慎ネタが存在するだけに、読む人を選ぶかもしれないが、そこに挑んでいく作者の姿勢が潔くて、むしろ作品が光って見える。個人的に大好きなネタは、政権支持率の話題がいつの間にか漫画の読者アンケートのように語られていく#11と、法廷画のイラストレーターが不足したために流行の絵師に法廷画を依頼したら…という#04だ。
現実では放送事故どころでは済まされないような事態も軽々と扱ってしまうところに、本作の魅力がある。高速道路の事故をマリ○カートのようなゲームで再現しようとするネタなど、現実にしてしまった場合の世間の反応を考えると恐ろしい。特に近年、多方面からのバッシングを恐れて無難な道を選ぶのがテレビ局の姿勢になり、それゆえにいつどんなチャンネルに合わせても同じようで無味乾燥な番組が制作されていると批判されがちである。だからこそ、せめてフィクションの世界でなら思う存分やりたい放題なテレビ番組があってもよいのではという、世の中の潜在的な欲求に応えるものとして、本作が生まれたのではないだろうか。
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