こどものじかん 私屋カヲル 双葉社 全13巻
6年生に進級したりん達。林間学校、三者面談、卒業制作と、行事が終わり、別れの時は刻一刻と迫っていた。そして迎えた卒業式。生徒は学校を巣立ち、教員はゴール地点に到達し、また新たなスタート地点を見据える。8年にわたる連載を経た本作は、ついに最終回を迎えた。
本作は、過激な描写が話題になったが、その一方で、「子どもとは?」「大人とは?」といった真剣な問いを意識させ、教育の意義、教師の意味について絶えず問いかけてきた秀作だった。時に、正解が1つではない問題が次々と提示される、シリアスな展開も魅力的だった。
林間学校や卒業式では名言を刻み、周囲の心を揺さぶるまでになった青木先生、青木先生への恋慕を乗り越え、自らの適性を鑑みてスクールカウンセラーの道を目指し始めた宝院先生、愛情に恵まれなかった子ども時代を過ごした不安と向き合い、子を産み、与える立場へと1歩踏み出した白井先生、白井先生をどこまでも愛し、支え続ける小矢島先生。学年の枠を超えて双葉小学校の生徒のために動き続けてくれる先生に囲まれ、双葉小の生徒達は幸せだと思う。
青木先生への愛を貫き通し、自分の心の闇と戦い続けたりんちゃん、白井先生の親友となり、卒業式では青木先生と抱き合って喜ぶ姿が印象的だった黒ちゃん、母親との関係に悩みつつ、これからもしっかりと向き合っていこうと決意する美々ちゃん、そして、真の保護者として成長したレイジ。1歩踏み出す勇気を得た皆に、励まされた。
登場人物達が刻む1コマ1コマが、心に響いてくる。やはり、教育は育てる者と育てられる者とが互いに関わりあって成長していく営みであるのだな。そういえば、高校生の時、育児は「育自」でもあると習ったことをふと思い出した。
教育との関連では、常に避けられがちな性という問題に対しても真っ向に立ち向かった点も、この作品の注目に値すべきこと。その姿勢は、青木先生が校長室に呼ばれた際に語った内容、そして、最終話で描かれたりんとのその後のエピソードでも貫かれている。
連載開始時に小学校3年生だったりん達も、来春には高校生だ。その時間の流れを上手く活かし、高校生になったりん達のその後を描くというアイデアには感嘆すると同時に、作品が世に出てからの時の経過を感じた。作中でレイジが語った、子どもが成長するということは、その成長を見守ってきた人にとっても、それだけの時間が流れたということを意味するのだという台詞の重みがひしひしと伝わる。
語りたいことはたくさんあるのに、うまく言葉を紡げないもどかしさを感じつつ、最後はこのような素晴らしい作品を世に出会わせてくれた作者に感謝の意を表して締めくくりたい。私屋先生、ありがとうございました!
※過去の記事※
『こどものじかん(1)(2)(3)』 『こどものじかん(4)(5)(6)』『こどものじかん(7)(8)』PR