魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 既刊4巻
魔法使い少女ロマと、家来のミィノは、人間の欲望(クレシャ)を対価に魔法具を無料で配る。特に大きな欲望を抱えた中高生達は、己の欲望に飲み込まれるか、それに打ち勝つか。
順調に巻数を増やしている本作は、4冊目の単行本を世に出すことになった。話数にしては、20話を迎えた。話の筋としては非常にシンプルながらも、若さゆえに生まれる欲望について考えさせられる珠玉の5話が収録されている。
「もう1人自分がいたら…」という、誰もが1度は願うような望みが叶ったら、どんなことが起こるか。そんな題材を扱ったのが、第16話「ゴズリットの葉針」。コピーに面倒なことを押し付け、楽しいことだけをしようとする本家本元に対して、コピーが反旗を翻すという展開は、特に物珍しいわけでもない。それでも、コピーを消すにはお互いが殺し合うしかないという隠された真実はダーク過ぎる。しかし、ラストは、その後増えてしまったコピー達が話し合いながら義務を分担し合うという、コミカルな描写に落とし込んであり、読後感はあまり重くない。
ツインテールでツンデレの小学生の女の子が、親戚のお兄ちゃんに振り向いて欲しいと思い、大人の姿を手に入れるのが、第17話「ペジュラの短剣」。ギャグ調で進んでいく物語のラスト、少女は大切な事実を知り、満足げな顔で魔法具を返す。少女の後姿を眺めるロマの優しい表情が印象に残る。
第18話「マクロデウスの遊戯盤」は、平凡な遊びに退屈した高校生達が、スリルを味わいたいという誘惑に駆られ、魔法具に手を出すという話。生身の人間がすごろくの中で起こっている出来事を実際に体験するという設定は、映画「ジュマンジ」と似たモチーフである。続々仲間を失った先に行き着く結末は、読んでのお楽しみ。
「悔いのない高校時代を送りたい」という非常にまっとうな願いも、独りよがりのものになってしまってはいけないという教訓に満ちた話であるのが、第19話「メルドランドの闇晶石」。意思を操る石という密かな駄洒落もポイント。
第20話「ダヴァランの彩具」は、時間がたっぷりあればなという女子高生の願いを叶えるところが始まり。ところが、彼女の願いの裏には、本人も気付かないもっと別の欲求があった。自分にとって大切なものに気付かされ、一歩踏み出す勇気を得た主人公の姿が清々しい。
初期の頃と比べると、実に結末がバラエティに富んできて、面白くなっているなと思っているうちに、何と連載の方は間もなく最終回を迎えるとのこと。おそらく次の巻が最終巻となるだろう。最後まで見守っていきたい。
★過去の記事★
『魔法行商人ロマ(1)』『魔法行商人ロマ(2)』『魔法行商人ロマ(3)』****
未曾有の大震災は、津波、放射能漏れと、我が国に様々な影響を及ぼすこととなりました。また、被災者の方々の生活は、未だに厳しい状態にあると言わざるを得ません。管理人の家が東京電力から電力の供給を受けていることもあり、少しでも自分にできることをと思い、節電に努めるべく休止していた本ブログは、本日をもって再開いたします。計画停電が行われている時間帯や、電力の使用がピークを迎えるといわれる時間帯を避け、少しずつ発信していけたらと思います。今後とも、よろしくお願いします。
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