ローゼンメイデン PEACH-PIT 集英社 既刊5巻
"まかなかった"世界に決着が着き、"まいた"世界が本格始動することになった第5巻。薔薇乙女達には束の間の休息が訪れる。一方、"まいた"世界のジュンも、自らの課題であった学校と向き合う決意をするのだった。
"まいた"世界の物語が始まるとともに、これまで出番の少なかった人物が総出演することになる。ジュンの姉ののり、級友の柏葉巴、金糸雀のマスターであるみっちゃんと、以前からの読者にとっては懐かしささえ覚える人物が物語に絡んでくる。特に、真紅と猫の対決を描いたTALE 30は、雛苺と猫のエピソードを知る者にとっては、ほろっとさせるものであっただろう。
これまでは、雪華綺晶の魔の手を逃れることを目標に、一致団結してきた薔薇乙女達だったが、当座の目標が達成された今、これまで向き合わずに済んでいたアリスゲームの意味を再び問わざるを得なくなった。ここに、彼女らが背負った残酷な運命がある。雪華綺晶が再度襲来してきた時のために、再び共闘を誓い合う薔薇乙女達だが、金糸雀が思うように、彼女らの背負った運命が変わることはない。
そして、ジュンもまた、自らの課題に直面する覚悟を決める。しかし、ジュンが外の世界へと歩みを進めることで、ジュンと薔薇乙女との心の距離は広がってしまうかもしれない。年をとることで成長し、やがては老いて死に逝く人間と、永遠に変化することなく存在し続ける人形。これまでも何度か投げかけられてきた問題に、皆はどう立ち向かっていくのだろうか。
無力化されたように思えた雪華綺晶は、密かに力を蓄え、再び戦いを挑んできそうだ。まだまだ続く薔薇乙女の戦い。一見穏やかで楽しい日々は、そう長くは続かなそうだ。
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