BLOOD PARADE 唐沢一義 スクウェア・エニックス 既刊1巻
国際機関であるISS(国際安全保障局)は、吸血鬼に関する事件を扱う専門機関。吸血鬼討伐の力を持った者12人しかなれない使徒を目指すジルは、自らの家族を殺害した犯人である吸血鬼の親玉、真祖を追うべく、日々精進に励んでいた。見事使徒の選抜試験に合格した矢先、ボディーガードとしてルナという名の少女と行動を共にすることを告げられる。使途としては平凡なスタートを切ったかに思っていたジルだったが、既にジルの知らないところで思わぬ駆け引きが行われていた。真祖の狙い、そしてISS局長、レットの思惑とは。
長期連載作が次々と終了を迎えた2011年の『月刊Gファンタジー』。その流れの中で迎えた新連載が本作だ。主人公が吸血鬼討伐に向かう冒険漫画かと思いきや、途中に発覚するルナ=真祖の構図に、吸血鬼の殲滅を願うルナの思い、そしてルナを吸血鬼の側に引き戻そうとするケイという人物の登場など、少しずつ関係が複雑化していく。
用意されているモチーフには、これまでのGファンタジー作品と共通するものも多い。自らの存在を消して欲しいと願うルナの姿は、『隠の王』の宵風を思い起こさせるものであるし、人間と吸血鬼の境界を問いかけるストーリーは『シューピアリア・クロス』の筋と重なる。ある意味、安定した人気を得る条件を整えていると言えるわけだが、今後このような設定をどう作品としてオリジナルにまとめていくかが、作者の力量の問われる部分となるであろう。
絵は綺麗で、吸血鬼や闇を描くにマッチした暗さも併せ持っていて、非常に良い感じ。ジル、レットは格好良く、ルナは可愛く(ちょっとセクシー描写があるが)、魅力的だ。今後に期待。
PR