それでも世界は美しい 椎名橙 白泉社 既刊1巻
雨を降らせる能力を持つ「雨の公国」の第四公女・ニケは、その能力を買われ、世界を征服した「晴れの大国」の太陽王・リヴィウス一世に嫁ぐことになった。しかし、相手はまだ子どもである上に、亭主関白な性格。およそ貴族らしくない自由奔放な王女と優秀ながらも孤独感を抱える王の紡ぐ物語。
雨を降らせる能力を持ったニケは、心から世界が美しいと感じられなければ、地上に雫を落とすことはできない。しかし、リヴィウスは世界を手にしていながらも、世界の美しさを実感できずにいた。ところが、自分の性格とは真逆のニケと関わっていくうちに、世界を統べる王が「それでも世界は美しい」と思えた時、地上に雨が降り注ぐ。雨が地面に浸み込むように、優しい雨は渇いた王の心にも染み渡るのだった。
心情の変化は、リヴィウスだけに訪れたのではない。初めはリヴィウスの態度に反発するニケだったが、徐々に世界を制覇した王が持つ孤独感や優しさに触れるにつれ、リヴィウスへの愛情を深めていくのだった。
生命が育つには、日光と水の両方が必要である。砂漠に暮らす人は雨を渇望し、洪水に苦しむ人は太陽の光を求めてやまないであろう。ニケとリヴィウスは、本来互いに惹かれ合う存在だったのかもしれない。2人の今後を見守りたくなる。
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