VIVO! 瀬川藤子 全3巻
面倒くさいことが嫌いで、あくまで自分主義を貫く教師、仲村渠豊寛、通称ナカムラと、同僚、顧問を務める架空物具現化同好会に集まった生徒達との交流を描いた物語の最終巻。生徒は3年間過ごした高校を巣立ち、それぞれの未来へ向けて旅立っていく。
自分主義の適当教師の物語もこれで終了。そもそも、一般の青春漫画といえば高校2年生や1年生を扱うのが定番であるが、本作は高校3年生を中心に据えている。前者がいつまでも終わらないかのような無限の時間を感じさせるのに対して、後者はしっかりとタイムリミットを意識させる。この物語は、本来始まった瞬間に終わりを予告させるものだったのだと、今更ながらに気付いた。それだけ、作中の生徒、住吉が思っているように、このまま終わって欲しくないという気持ちが強かったのかもしれない。
今回も、破天荒ながら最終的には帳尻を合わせてしまう、ナカムラの見事な才能が光る。自殺癖を持つ生徒とのやり取りでは、結果的に生徒だけでなく新人教師の手助けまでしてしまうし、交通費を使い果たして家に帰れなくなった住吉の捜索では、住吉本人が学校を巣立つことの意味について考えることになった。
そして、そんなナカムラ節の集大成が、卒業式の日に同好会の生徒の1人ひとりに掛ける言葉だ。本人は、ろくに生徒の方も見ないで、適当な素振りで話すのだが、実はその言葉は生徒の心の奥にしっかりと染み渡り、辛くなったとき、生き方に迷ったとき、ふとした機会に思い出されるのであろう。このような場面もお決まりの感動のシーンのようにならないのが、本作の小気味良いところ。「なんだかんだであの子たちの事よく分かってますね」と傍でコメントを聞いていた東本が言えば、嫌な顔を見せる。やたらに恩着せがましい教師より、さっぱりしていて良いではないか。
痛快であり、それでいて肩に力を入れずに読むことができる、稀有な作品であっただけに、終了は残念。引き際の潔さがあると思うべきか。
◆過去の作品◆
『VIVO! (1)』『VIVO! (2)』PR