詠う! 平安京 真柴真 スクウェア・エニックス 既刊1巻
主人公は中学生の男の子。その名は何と藤原定家。和歌に情熱を注ぐ祖母の影響で、歴史上の人物と同じ名前を付けられてしまった主人公は、周囲から「定価」のニックネームで呼ばれ、からかいの対象になっていた。そんな定家が、修学旅行で訪れた京都の地で、クラスメイトの為すがままに着物を着させられていると、突如平安時代にタイムスリップしてしまった。在原業平に天女として見初められた定家は、1000年前の世に暮らすことになってしまう。
『夢喰見聞』や『鳥籠学級』の作者、真柴真の最新作は、百人一首をテーマに選んだもの。主人公が次々と歌人と出会い、歌人が歌合せをする過程で、百人一首の各々の歌に込められた詠み手の背景を主人公とともに心に刻んでいく構成。
業平は、定家のことを女だと思い、恋の相手として接しようとするため、必然的にBL要素が含まれる。この点を除けば、和歌の世界を扱った内容は読む人を選ばない。言霊の力によって、歌に込めた情景が現実に作られていくファンタジックな設定や、主人公の定家が人々と出会う過程を通して百人一首を完成(=編纂)するという発想も面白い。今後は小野小町も本格登場するなど、楽しみなイベントが待っている。期待したい。
PR