いまさらノストラダムス 善内美景 メディアファクトリー 既刊1巻
父親のリストラを防ぐために、なぜか大豪邸で謎のバイトを引き受けることになった高校生、日暮海月。豪邸の執事、右近に案内されて向かった先にいたのは、何と20世紀の終わりに世界が滅亡すると予言し、世間を騒がせたノストラダムスだった。彼は大々的に予言を外して以来、世間の冷たい目に耐えられず、自宅に引きこもっていたのだった。海月の役割は、ノストラダムスの現実嫌いを治すこと。ここに、過去の偉人と現代の高校生の2人の奇妙な友情物語が始まる。
タイトルの通り、まさに「今更」感が満点の人物を登場人物にした驚きの作品。しかも、ツッコミどころは満載である。ノストラダムスは存命で、しかもイケメンの美青年であるし(何歳だ、そして年をとらないのか?)、海月の父親は突如理由不明のリストラ宣告を受けている(無視して不当解雇で訴えればおそらく勝つ)。まあ、それはさておき、アイデア自体は面白く、ノストラダムスの現実嫌いな残念イケメンぶりも笑える。
ノストラダムスは、現実に対してとことん悲観的な見方をする。高校生の制服を見ただけで、個性を封印し、異質な者を排除する教室内の空気を連想して憂いたり、コンビニの袋を目撃しただけで、便利さと引き換えに没個性を強いているとコンビニを批判したり、ネガティブネタが耐えない。身の回りのものを悲観的に捉えて嘆く姿は、まるで絶望先生だ。このネガティブぶりが、本作の面白さを支える大事な要素だ。加えて、ノストラダムスが着ているTシャツのデザインが、「やってられるか」「【急募】夏休み」など、日本語のプリントが基本で笑える。
ノストラダムスはもちろん、執事の右近や左近、海月の友人の浦川など、美男子が多い作品で、女性向けの雰囲気ではあるが、内容的には男女どちらでも楽しめる。
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