回転る賢者のシュライブヴァーレ 星屑七号 スクウェア・エニックス 既刊1巻
平凡に生きることを選択してきた中学3年生、一之瀬七梨は、ペン回しだけが唯一の取り柄だった。そんな七梨がいつも通りペンを回しているところに現れたのは、才ある者の文具に宿るという精霊、アイゼンブルーメ。名は、「品格と優美のカトレア」。その精霊と契約すれば、どんな願いも叶えてもらえるが、それと引き換えに残酷で孤独な死を迎えることになるという。さして特別な願いのない七梨は、命と引き換えにしてまで夢を叶える気はなかった。しかし、幼い頃に抱いていた、他人の力になれる人になりたいという夢を思い出した七梨は、精霊との契約に踏み切る。憧れの自分に向かって一歩を踏み出した七梨だったが、精霊と契約を交わした者が向き合うべき現実は、決して生易しくはなかった。少女と文具の精霊が紡ぐ物語に待っているのは、希望か絶望か。
どんな願いも叶える契約、そしてそれに伴う犠牲という設定は、「魔法少女まどか☆マギカ」などでも見られる、今日の王道設定とも言えるかもしれない。また、契約者同士の戦いがある点も、共通点である。別の契約者から文具を奪って破壊すれば、その力を吸収できるため、欲深い契約者は、自らの能力と幸運を強化しようとして別の契約者の文具を狙う。アイゼンブルーメとの契約は、敵との戦いを余儀なくされる、リスクを伴う行為だったのだ。七梨のように、ただ「他人の役に立ちたい」と願うだけでは人間として甘いのだろうか。また、個人の幸福を実現するには、他人の幸福を奪うまでしないといけないのであろうか。本作が抱える重いテーマである。
本質的に抱えている重いテーマと対照的とも言える可愛らしい作画、そして作品のテーマを象徴するような迫力のあるバトルシーンが本作の売りであると思う。契約者としての運命を背負うことで、徐々に懸命に生き、周囲に本気でぶつかることを覚えていく七梨の姿にも勇気付けられる。
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