PandoraHearts 望月淳 スクウェア・エニックス 既刊22巻
オズの正体は、チェインであった。そして、オズの陰に潜み、ベザリウス家に厄災をもたらす元凶となってきたのが、他でもないジャック=ベザリウスだった。自らの運命に絶望感すら覚えるオズだったが、叔父であるオスカー、そしてこれまでともに行動してきた仲間たちの愛情を感じることで、再び勇気を取り戻す。一方、グレンは自らの願いを叶えるべく、着々と準備を進める。パンドラやバスカヴィルの民が欲してきたアヴィスの意志に手を伸ばし、過去を変える行為を今にも始めようとするのだった。過去の改変を拒み、別の道を模索しようとするオズの願いは受け入れられるのか。クライマックスを間近に控えた、緊迫の展開。
謎が謎を呼ぶ展開であった本作も、最近は伏線の回収が進み、物語は一気に進んだ。ジャック、グレン、オズ、アヴィスの意志、ギルバート、ヴィンセント、ブレイク、バルマ公など、それぞれの人間が抱える願いは一様ではなく、それゆえに深い対立を余儀なくされている。しかも、それは誰が悪者で誰が善人かといった二項対立では語れない、ぞれぞれの正義の対立である。
1巻でオズをアヴィスに落とした張本人、オズの父親ザイ=ベザリウスとの葛藤も乗り越え、初めの頃と比べてとてもたくましくなったオズ。ブレイクをはじめ、彼は既に人々の心を動かせる存在へと変化していた。オズが望む結末とは何か、気になるところだ。
次巻がいよいよ最終巻となった『PandoraHearts』。かつてのようなお茶会など、もうできないほどに皆の状況は変化してしまったが、オズが望んでいるのは、素晴らしき何でもない世界であろう。各人の願いとどう折り合いをつけ、理想の結末を迎えようとするのだろうか。
▼過去の記事▼
『PandoraHearts (1)~(10)』『PandoraHearts (11)』『PandoraHearts (12)』『PandoraHearts (13)』『PandoraHearts (14)~(19)』PR