カリュクス 岬下部せすな 双葉社 既刊3巻
2050年、砂漠化が進んだ世界には、水と食料、土地を求めた戦争と隣り合わせの日々が訪れていた。その1つであるサイタマ国の防衛軍に所属する沢村草史は、「花の少女」ナデコと出会う。沢村はナデコの悲惨な運命に自分が関わることを決意し、共に軍の最高レベルの戦闘部隊に所属するのだった。
悲惨な運命に晒された軍人と少女が集うのが、特殊部隊「フローリス」だが、そこで生活する人間達は皆それぞれに使命感を持ち、己の運命を受け入れ、任務に励むのだった。2巻と3巻では、沢村とナデコ以外のペアにまつわるエピソードも描かれる。パートナー達それぞれが自分達なりに運命に向き合い、魂のつながりを持っていると感じさせる物語は心温まる。
また、特殊部隊「フローリス」が組織されるに至った背景なども、徐々に紹介されていく。沢村は、ナデコとの出会いのきっかけは軍隊によって仕組まれたもので、すべては特殊部隊「フローリス」を作り出すための計画的な行動がもとになっていたと知り、ショックを受ける。しかし、ナデコはそんなことを気にしない。たとえすべてが仕組まれた計画に過ぎなくとも、自らの気持ちは本物であり、パートナーと共に過ごし、戦うことに喜びを見出そうとするナデコの姿は、あまりに健気だが、路上の植物が踏まれても踏まれてもまた起き上がるような力強さを感じる。沢村も大きく心動かされ、彼女が散りゆくまで精一杯守り続けることを決意するのだった。
かつての関東地方一帯をまとめるサイタマ国の最大の敵は、国境を接するナラ国である。資源がより希少になる中、両国の戦闘は激化する一方である。そんな中、沢村は戦闘中に双子の弟である草介と出会う。今後は、自分達と仲間の生活を守るために戦うという戦争の大義に疑問を呈する場面も想定され、戦争を扱った漫画として重要なテーマに向き合うことになりそうだ。
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