詠う! 平安京 真柴真 スクウェア・エニックス 既刊5巻
主人公の藤原定家は、京都への修学旅行中に起こった事故が原因で、平成の世から平安時代にタイムスリップしてしまった少年。現代に戻るための条件は、歴史上有名な歌人と出会い、和歌を集めること。定家は、表向きは言祝ぎの天女として小野小町とともに行動し、紀貫之や凡河内躬恒ら和歌の編纂に関わる人物との交流を深め、順調に和歌の収集を続けていた。しかし、怨霊と化した菅原道真の魔の手によって、定家とその周囲にいる人々に危険が降りかかる。
当初から、和歌に詠まれる心情や情景が現実の世界に反映されるというファンタジックな設定が特徴であったが、4巻、5巻ではその設定が存分に活かされていた。死に際の紀友則や、定家を助けようとする小野小町など、当時の人々がまさに命を懸けて紡ぎだした言葉に込められた思いが、自然を動かし、その場にいる人々の心をも大きく突き動かす。きっと、平安時代に生きる人々にとって、和歌の存在はそれくらい大きな意味を持っていたのだろうと思う。掛詞や裏に隠された解釈に関する解説も奥が深く、ちょっと物知りになれる。
さて、物語はいよいよ終盤。菅原道真によって操られた大友黒主によって命を狙われた定家は、小野篁によって危うく命を救われた。しかし、今度は在原業平に男としての正体を見破られてしまうという危機に直面する。また、言祝ぎの天女の力を手に入れようとする菅原道真との戦いも気になるところだ。作者によれば、次の6巻が最終巻。果たして、定家は無事平成の世に帰ることができるのか・・・
■過去の記事■
『詠う! 平安京(1)』『詠う! 平安京(2)(3)』PR