カリュクス 岬下部せすな 双葉社 全4巻
2050年、砂漠化が進んだ世界にあるサイタマ国の防衛軍に所属する沢村草史と、「花の少女」ナデコとの物語の最終巻。国境を接するナラ国との戦いが激化する中、ナラ国もまた、花の少女を利用した特殊部隊を用いていることを知る。しかも、その部隊を率いているのは、草史の弟、草介であった。兄弟は、互いに自分の大切なものを守るために、国同士の戦争に加担し、ライバル国同士で争う。
草史、草介とも花の少女とは強い絆で結ばれ、大切なものを守るために戦い、その過程で分かり合うことができたが、戦いはナラ国の敗北をもって終わった。そして、ナデコの犠牲は避けられなかった。懸命に咲き、散りゆく定めを受け入れ、笑顔で枯れていくナデコの姿に心打たれた。多大な犠牲を生む戦争の矛盾を突き付けられた草史だったが、ラストでは、その矛盾に立ち向かおうと誓った彼のひたむきな努力が実を結ぶ。大切な人と一緒に生きることの尊さを軸に人間同士が分かり合おうとすれば、きっと争いだって何とかなるという希望を感じさせられる読後感であった。
☆過去の記事☆
『カリュクス(1)』『カリュクス(2)(3)』PR