コロコロ創刊伝説 のむらしんぼ 小学館 既刊1巻
創刊から40年の時が経とうとしている「コロコロコミック」にデビュー作を掲載し、その後もコロコロ一筋に漫画家として活躍してきた、のむらしんぼ氏。しかし、世の移り変わりは早く、漫画の好みの変遷、バブル経済の崩壊とともに、右肩上がりの時代は終わり、氏が気が付いた時には家族は去り、借金に追われる生活になっていた。お得意のギャグをひっさげて、出版社に原稿を持ち込むも、編集者からは「古い」と一蹴される始末だった。どうにも行き先を見つけられずにいた作者のもとに飛び込んだのが、初代編集長の訃報であった。悲しみに打ちひしがれる作者が、ふと思い出したのが、原稿を持ち込んだ時に編集者から言われた、「のむらさんにしか描けないものを」という言葉だった。自分にしか描けないものを描こうと決心した作者による、コロコロコミック誕生物語。
コロコロコミック創刊の裏にあった、編集者たちの熱い思いや、雑誌を支えた漫画家たちの物語は、どれも心揺さぶるエピソードに満ちていて、これまで誰も描かなかった物語として再発見されるに相応しいものだと思う。仕事の厳しさ、仲間とともに頑張り、支え合うことの尊さを教えてくれる。特に、若手漫画家が編集部の一室に集まって互いに助け合って作品を仕上げていく光景は、今ではおそらく失われてしまったものであろう。
そして何より、随所で語られる、作品裏話や作者の人間性に迫るエピソードが、本作を面白くしている。コロコロに携わった人々の感動的な物語と、作者の現在や過去を自虐的に述べた部分とが表裏一体となって、本作を構成しているのだ。一度はどん底を味わった作者だからこそ描ける歴史があるのだなと思う。1人の人間が本書を買うことで、どこまで作者の借金返済に貢献できるのかわからないが、作者渾身の作品として、買って読む価値はある。
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