テラモリ iko 小学館 既刊3巻
高給アルバイトに惹かれて、スーツになど何の興味もないのにスーツ店でアルバイトを始めた女子大生、高宮陽が、バイトに対しても高いレベルを要求する副店長に鍛えられながら、人間的に成長を遂げていく物語の第3巻。
徐々に仕事やスーツの奥深さに触れることで、仕事にも真剣に取り組み始めていく陽。しかし、副店長からシャツに関する知識をテストすると言われても、その膨大な情報量に圧倒され、勉強しなかったことが原因で、副店長に見限られてしまう。さらに、試験前に仕事を減らしてもらいたいと言うことができず、忙しい生活に追われ続けているうちに、無理がたたって脚立から転落してしまう。
物語が動き出すのは、ここからであった。副店長は、売り上げを気にしてアルバイトに対しても過度な要求をしてきた自分自身のやり方を振り返り、自分を責める。だが、店に復帰した陽は、以前課されていたテストに合格したいと頼み込み、見事に副店長の要求以上にシャツに関する知識を披露する。合格した陽の満面の笑みを見た副店長に、いよいよ恋心が芽生えていく。そんなところで3巻は終わる。
ラブコメの「ラブ」成分がいよいよ盛り上がりそうな気配も感じさせる流れになってきた。いわゆるお仕事ラブコメとして分類されるであろう本作。しかし、3巻を読んでいて、重要な社会問題について考えずにはいられなかった。それは、ブラックバイトである。およそ学業との両立を無視した過度な要求とスケジュールに耐えようと頑張る陽の姿は、まさにブラックバイトに勤しむ世の大学生を映しているように思えてならない。大変で責任の大きな仕事を通して成長していく喜びと、バイトとしては過度な仕事を要求される理不尽さは紙一重というか、本人のとらえ方次第な部分もあるので、本当に難しい。実際、中央店にヘルプで来る大橋や、陽の大学の友人は、バイトとしてそこまで頑張るべきかという疑問を投げかける。働くとは何か。そんなことまで考えさせられる漫画としても読めてしまう。
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