部活、好きじゃなきゃダメですか? いづみかつき スクウェア・エニックス 既刊1巻
多数のスポ根漫画に喧嘩を売るようなこのタイトル、思わず共感してしまった読者も多いのではないかと思う。運動系の部活を扱った漫画と言えば、名作には枚挙にいとまがなく、人々に多くの感動や勇気を与えてきた。それは事実として認めるも、作中の世界が現実にある中高の運動部と、あまりにかけ離れてはいないか、という疑問を抱えている運動部員や運動部経験者にお薦めしたいのが、本書である。
メインの登場人物は、高校のサッカー部に所属する男子3人。最初の数話は、部活漫画に必ずといっていいほどに登場するシーンと、それに対する西野と大山の2人の「ねーよ」というツッコミから始まる。全国大会目指して一致団結して頑張る部員達、穏やかな性格で時に名言を吐く顧問、「決勝で会おう」と何の臆面もなく言う他校の生徒… こんなものは漫画の世界だけの空想に過ぎない。部活の現実は、面倒な練習をいかにして休もうかと口実を考える生徒、高圧的な顧問による支配など、何の夢も感じられないものだと、本作の中では徹底して揶揄する。もちろん、登場人物の1人、窪田は素直に部活を頑張り、このひどい現実が部活のすべてではないとフォローしてくれる。そこで一応はバランスを取っているのだが、残り2人の言葉に共感する部活経験者は多いのではないかと思う。
特に、部活指導の場の理不尽さを扱ったものとして名作だと思えるのが、第9話(本作の呼び方では「9休み」)で扱うバレー部の話だ。レシーブができない女子部員に対して、顧問は明確な技術指導もできずに「やる気がないなら帰れ」と言い、部員が帰ろうとすると「帰れって言われたら帰るのか」と言い放つ。そんな状況に涙する女子部員を見て、西野はかなりクズな方法ではあるが、痛快な解決策を講じる。
運動部を通して、様々な経験を積み、かけがえのない仲間と出会えた方には申し訳ないような内容だが、現実の部活に疲れ切っている中高生や、嫌で仕方ない運動部を経験した大人のドツボにはまるテーマとその扱い方に、共感できる方は多いと思う。
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