orange 高野苺 双葉社 既刊6巻
10年後の自分から届いた手紙を基に、5人の高校生が協力して友人の翔を悲劇から救おうとする物語の番外編。傷ついた翔の心と向き合い、これからも共に生きることを5人が誓い、結末を迎えたorangeの未来はどんなふうになったのかを描いたのが「-未来-」、そして翔を失った並行世界を生きる須和を描いた「須和弘人」の2編から成る。
「-未来-」は、翔を救った後の未来が描かれている。高校時代、その後を経て、無事翔と菜穂は結婚する。皆が望んだ未来の様子が、後悔に渦巻く並行世界の5人にも伝わったのではないかという希望を感じさせる結末が印象的だ。
「須和弘人」編は、本編を支える重要な番外編だと思った。ここには、菜穂が好きであるにも関わらず、なぜここまでして須和は翔と菜穂が結ばれるように応援してきたのかという答えが描かれている。周囲から見ればイケメンでかつ性格も良いスーパーマンのような存在である須和だったが、ずっと思い続けている菜穂は、翔のことだけを見ている。翔には敵わないという気持ちと、菜穂は翔と一緒にいることで幸せになれるという確信を持ちつつも、菜穂のことを諦められない須和だった。自己嫌悪を抱きつつも、菜穂が自分の方を向いてくれる可能性に賭けて、結果的に2人の恋路を邪魔する行動も取ってしまう。そんな折に起こったのが、翔の死だった。
10年後の自分からの手紙を読み、自らの心の内にある黒い感情を理解し、好きな人にとっての本当の幸せについて考えたからこそ、手紙をもらった須和はまっすぐな気持ちで2人を応援できた。自分の幸せよりも翔と菜穂の幸せを優先させることが、最終的には自分にとっての幸せになると信じ続けて行動した。愛する人の幸せのために行動するとはどういうことか、考えさせられた。
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