PandoraHearts 望月淳 スクウェア・エニックス 既刊11巻
15歳の成人の儀式の最中、バスカヴィルの民と呼ばれる者らに襲われ、アヴィスという監獄に落とされたオズ=ベザリウスは、アリスという少女と出会い、契約を交わすことによって、地獄から抜け出す。
謎を追い求めて向かったかつての首都、サブリエから帰還したオズ一同。バルマ公の情報を基に、過去の謎を解くために、トール村へと出向く。オズは、先祖のジャックが残した小箱を受け取り、事が円滑に運んだと思われたとき、過去にも起こったとされる、謎の首狩り事件が発生する。
謎の多い本作も、徐々に過去の事実が判明し、各人の思惑も少しずつ輪郭をはっきりさせてきた。そんな中、オズとその従者、ギルバートが心の奥底に仕舞い込んでいたはずの暴力性が、確実に頭角を現してきた。それは、悲劇の序章となるのか。それとも、2人は運命に抗い、過去の因縁から解き放たれることができるのか。
『PandoraHearts』には、表面上は平静を貫き、穏やかな様子を見せることに長けていても、内面には怒り・憎しみ・悲しみといった強い感情を抱きながら、日常を生きる人物が多い。しかも、その烈しい感情は、100年も前の出来事に起因する。過去の人生の跡が尾を引いて歪んだ性格となった者、達観した者。それぞれの目に映る世界はどんなものだろう。過去の人生に囚われる彼らにとって、「自由」や、「自らの意思」といった言葉は、意味を成すのだろうか。
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