彼女のひとりぐらし 玉置勉強 幻冬舎 既刊2巻
輿水理香は、26歳独身の女性。会社を辞めてフリーのイラストライターになるが、仕事の依頼はいまいち。恋人のいない状態が何年も続いており、自宅から一駅のアパートに独り暮らしている。部屋で妄想に耽ったり、独りプールに出掛けたりと、独身女性の気ままで切ない暮らしを描いた作品。
タイトルからすると、ちょっとドキッとする作品。しかし、実際のところは、作者が「残念女子」と名付ける女性が独り暮らす日常を描いた作品だ。サッカーを見ながら、ラテン系男子との恋愛を妄想してみたり、こたつを買ってだらだらとしてみたり、気ままな生活が描かれる。
1話1話について、作者のまとめ方が上手く、切なさの中にある笑い、笑いの中にある切なさがひしひしと伝わってくる。独り近くのプールに出掛け、思いっきりリフレッシュした後、安上がりな人間である自分を褒めつつ、男が寄ってこないことをポツリと嘆く姿を描いた話など、その最たるものだ。
滑稽な話の合間には、妹の結婚、仲良しの友達との本音での語らいなど、主人公の年齢を感じさせるようなエピソードも入れられていて、26歳の女性であることを意識させられる。現実がまずいと思いつつも、現在の気楽な状態にも愛着を持つ。素敵な男性に出逢う日を夢見つつも、男性を評価するシビアな目も持つ。恋人がいたらなと思いつつも、男性に媚びることはしない。このように絶妙なバランス感覚を持ち、気取らない主人公の姿勢が、多くの読者の共感を得ているのであろう。この辺りの描き方が、とても男性の作者による作品とは思えないくらいだ。
彼女は決して、独り暮らしをしている自分に絶望したり、現在の状況を嘆いたりしない。積極的に現状を受け入れ、日々を楽しむ主人公の姿を見ると、むしろ勇気付けられるような気もする。男性から見ても、十分可愛さと愛おしさを感じられるのではないだろうか。