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リューシカ・リューシカ 安倍吉俊 スクウェア・エニックス 既刊2巻



大人になると忘れてしまう、在りし日の瑞々しい感性。それを思い出させてくれるのが本作だ。主人公の空想少女リューシカの行動や発想は、時に過去の自分に重なり、時に物事の思わぬ見方を教えてくれるものである。全編フルカラーの美しい絵で描かれる、素朴で、それでいてどこか哲学的な匂いのする世界を満喫できる作品。

約1年振りとなった単行本の発売。今回も、子どもの視点から描かれる、感性豊かな物語がたくさん詰まっていると思う。例えば、「その9 みどりのしましまのあいつ」では、リューシカにとっては普段食べ慣れているはずのスイカでさえ、切られていない状態では縞々の謎の物体に見えてしまう現象を扱っている。思えば、我々はいつから緑と黒の縞がある球と、赤くて甘い夏の風物詩が同じ「スイカ」であることを認識できるようになったのであろうか。本作は、リューシカの行動を通してこのような哲学的な問いを投げかけてくれる。

ただし、無理に哲学的な部分ばかりが強調されているわけではない。「その14 うのつくあれのはなし」は、花梨等に対しておそらく誰もが生まれてから1度は抱いたであろう感情を面白おかしく描いたものである。

その他にも、命について学ぶ話、雪だるまを作る話など、リューシカの感情をストレートに表現した話も魅力的だ。前には登場しなかったリューシカの父、隣に住む高校生の猫矢も、本作を盛り上げてくれるメンバーだ。巻末のインタビュー形式になっているあとがきも必見。


◆過去の記事◆
『リューシカ・リューシカ(1)』
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