男子高校生の日常 山内泰延 スクウェア・エニックス 既刊5巻
恐ろしいことを考えたものである。それなりに人気を博している女子高生のゆるい日常を描いた漫画に対抗するかのように、男子高校生のどうでもいい日常の1コマを描いたら、どんな漫画ができるのだろうか。その考えを現実化したのが本作である。男子校を舞台にしているから、日常的に女子が出ることはない。女子が出てくるにしても、顔が明らかにされていない人が多過ぎる。このような、萌えとは無縁とも言える作品が、ガンガンONLINEで徐々に支持層を拡大し、アニメ化まで決定した。
本作の面白さは、一言で表現すれば「無駄」である。無駄に大掛かりな設定で缶蹴りをしたり、生徒会のメンバーが無駄に恐ろしい形相をしていたり、学内のちょっとしたいざこざなのに無駄に派手な勝負を演出したり。こういった1つ1つの無駄が、ちょうど悪乗りさせたらどこまでも突っ走りそうな男子高校生のイメージと相俟って、絶妙な面白さを生んでいる。
そこには、思わず「あるある」と言いたくなるようなネタはほとんど存在しない。むしろ、彼らは凡人が決してしないような域で日常を生きようとする。そう、本作は「日常」という名の下に非日常空間を描いた作品なのだ。
本作は終始男子校的なノリを貫く。その中ではヒロインとして崇められるべき対象の女子高生こそが、もはや変わり者や変人として扱われてしまう始末。それが端的に表れているのが、各巻に特別読みきりで収録されている「女子高生は異常」であろう。ここで描かれる女子高生は、誰もが変わり者で、ちょっとイタい人達である。このような描き方は、ある意味男尊女卑的であるので、読む人を選ぶ部分はあるかもしれない。
シュールなギャグと非日常的な日常が織り交ざった独特な雰囲気に関心があれば、是非とも一読を勧めたい。
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