ディメンションW 岩原裕二 スクウェア・エニックス 既刊2巻
コイルという発明品により、エネルギー問題が解消された21世紀後半を舞台にした、マブチ・キョーマという不正コイルの回収屋と、コイルの発明で功績を残した、亡き百合崎博士が開発したロボット、ミラによる、コイルの謎を追う物語の第2巻。キョーマは、美術館に現れる怪盗、ルーザーと戦ったり、法律の抜け道を利用して商売する実業家を追ったりする。
新次元Wの発見により、エネルギー問題が解決しても、コイルを巡る問題には、何かと裏がありそうな社会。特に強大な力を持つ不正コイルの秘密は、世間でもタブーとなっているという。ルーザーの言う「ナンバーズ」と呼ばれるコイルの謎とは。コイルに関する謎は深まるばかりだ。
そして、2巻のメインとなるのは、キョーマの家の周辺にすむ子ども達の話。いつの時代も、子どもの好奇心とは底知らずなもの。近所の子ども達は、もはや時代遅れとなったガソリン車を乗りこなすキョーマの姿に興味津々。しかし、通学路を外れた区域であるキョーマの家付近で、子ども達は事故に巻き込まれてしまう。
実は、コイルが生活の中心になった世界は、人間を数値化して進学や就職の指標にするという、究極の管理社会であった。すべての人々が周囲を気にして怯えながら生きる社会において、通学中の不慮の事故などあってはならないこと。そのような人の弱みに漬け込もうとする数値の改竄サービスを請け負う会社など、管理社会の闇に刃を向けるキョーマの姿を見ることができる。
巻末には、物語に何回か出てくる用語、「タワー」と「セントラル」についての解説もあり、世界観を理解する助けになる。
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