それでも世界は美しい 椎名橙 白泉社 既刊4巻
太陽の王国に嫁いだニケと、王国の少年王、リビが紡ぐ物語は、ついに第4巻に達した。ニケの母国、雨の公国の現国王であるニケの祖母の謀略により、2人の仲は引き裂かれそうになる。しかし、お互いがお互いを必要とする想いは強く、その気持ちは雨の公国の家族に伝わった。これにて、雨の公国の試練は幕を下ろす。そして、次は世界五大国の中で最も気性が荒く、関係を維持するのが難しいとされる砂の皇国との物語が始まる。
試練を与えられるたびに互いへの愛を深めていく2人。ニケが祖母の気持ちを理解しつつも、リビと過ごす人生以外考えられないと決意し、処罰でも何でも受け入れようと覚悟する場面は、雨の公国編屈指の名場面。ニケは、以前感じた、今までにない感情が、すなわちリビへの愛情であると気付き、これまで以上にリビへの愛おしさを実感する。リビの言葉、「お前のときめきなんか俺の周回遅れだ」が胸に響く。そんなニケの気持ちが本物であると理解した祖母が、国を去るニケを、心からの温かい想いを込めた雨降らしの歌で見送る終幕が印象的だった。
隙間の「だれとく裏設定」や、巻末のおまけ漫画「概ね世界は美しい」など、サービスが充実しているのが、本作の売り。これらの企画が好評であるため、今後も続けていくそうだ。特に巻末の4コマが非常に良い味を出していて、個人的にはとても好きだ。
●過去の記事●
『それでも世界は美しい(1)』 『それでも世界は美しい(2)』 『それでも世界は美しい(3)』PR