たーたん 西炯子 小学館 既刊1巻
フラワーコミックスからの発売ではあるが、連載は青年誌の作品。現在43歳の上田敦は、全く冴えない28歳童貞という状態で、刑務所に入る友人から鈴という娘を預かる。それから15年、宅配ドライバーの仕事を続けながら、必死に子育てをしてきた敦だった。しかし、鈴は出生の秘密を知らないまま育ってきて、翌年には刑務所から出てくる実の父に引き取られる予定である。近い将来、いや今すぐにでも娘に事実を話さなければならない敦であったが、話を切り出す勇気もタイミングもないまま、日々を過ごしているのだった。そんな父娘の物語である。
本質的には重いテーマを扱った話であるが、気の優しい敦としっかり者の鈴というバランスが取れた親子だからこそ生まれる、爽やかで時に笑ってしまうやり取りが魅力的な作品である。敦は思春期の(しかもかわいい)娘を持ち、心配が絶えず、子育ての難しさを実感しているところだが、娘は、まっすぐいい子に育っている。クラスの中で弱い立場にいる生徒の味方になったり、憎まれ口をたたきながらも、心の底では父親のことが大好きだったり。
いつかは通り抜けなければならない、鈴が真実を知る時はいつになるのか。その時のお互いの選択が気になるところだが、今はまだ、2人の他愛もない親子関係を見ていたい気もする。
PR