こどものじかん 私屋カヲル 双葉社 既刊7巻
新人教師、青木大介と、おませな小学生、九重りんとのやり取りを中心に、りんの友達の鏡黒、宇佐美々、大介の同僚の教師達を巻き込んでの物語。りん達は4年生に進級。
生徒同士、教師と生徒、教師同士の交流から生まれる相互作用がますますパワーアップしてきた。その中で、各々が自らに与えられた課題に果敢に立ち向かっていこうとする姿から、日々を生き抜く力をもらえるような気がする。
特に象徴的と言えるのが、大介の同僚の白井先生の心情の変化。教育など、自らの生計を立てる手段に過ぎないとする考えで教員生活を送ってきた彼女は、モンスターペアレントの対応を通して、ふと自分の親子関係を見直す機会を得る。そこから、これまで自分が受けてきた教育を教育者の視点から捉え直すという道を見出す。学校秀才として生きてきながら、その他の面では自分に足りない面があると認識し、自分の生き方を見直していく姿勢には、心打たれる。
大介とりんの関係にも変化が訪れる。大介は、自分のりんへの想いを父性のようなものだと捉え、恋愛感情を否定する。しかし、徐々にりんの家庭事情を知っていくにつれ、教師の立場ながら、家庭への介入も始める。りんは、自分の暗い内面を知っても、自分のことを見放さなかった大介への温かい想いに対し、心からの感謝を示しつつ、育ての親であるレイジの気持ちに応えたいと思い、大介との距離を置くことを決意する。
ロリコン漫画と形容さえながらも、教育問題の取り上げ方に非常に誠意を感じられるのが、本作の特徴。舞台となる双ツ橋小学校の教員は、皆真摯に日々の問題へと立ち向かっている。そこからは、教育現場への嘆きや批判ではなく、希望を見出せる。教師達は、単に「情熱」や「熱血」という言葉では括れない、しかし、心のこもった姿勢で、生徒と向き合っていく。時に不器用で、だけど、決して客観的な視点を見失わず、言動に注意を払いながら、問題と対峙する。誠心誠意が感じられる。
教師だけではない。教師以上に速いスピードで、子どもは成長する。りんや黒のように、育った環境ゆえに、早い時期から子どもとしての感情を捨てなければならなかった子ども。反対に、レイジや白井先生のように、成人しても、いつまでも内に潜んだ親の影を排除できずに苦しむ大人。この物語は、大人も子どもも関係なく、自らの苦しみ、悲しみ、課題を乗り越えていくことをテーマとした、人間ドラマとしての側面も持っている。
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