Venus Versus Virus 鈴見敦 メディアワークス 全8巻
私立銀女学院の中等部に通う鷹花スミレは、他の人には見えない化け物が見える目を持っていた。ある日の学校帰りに化け物に襲われたところをルチアという少女に救われて以来、魔人(ヴァイアラス)退治に奔走することになる。やがて、ヴァイアラスを操っていた黒幕が明らかになるにつれて、戦いは激化する。敵の思惑を阻止し、世界を守るべく、彼女達は敵に立ち向かう。
戦う美少女とセカイ系という設定を基礎とした物語。正体のよくわからない敵と美少女が戦うというところや、戦いが世界の終末を防ぐという目的で行われる点は、典型的なセカイ系のストーリーだ。しかし、本作は巨大ロボが登場するわけでもなければ、恐ろしい兵器が使われるわけでもない。「新感覚ダークファンタジー」と銘打ち、ゴスロリも取り入れる辺りは、ファンタジーの要素が強い。
テーマとしても、他人を受け入れることの尊さなど、案外普遍的なものが扱われているので、決して読者を限定するような作品ではないと思う。現在の世界だって、捨てたもんじゃない。きっと、互いに受け入れ合える人と出会う可能性に満ちている。そのような温かいメッセージが物語の結末から感じられる。
絵は、特に萌えを意識したものではない。むしろ、綺麗な絵とリアルな絵の中間に当たるような雰囲気。トーンを多用せず、白と黒でシンプルに仕上げたコマも多く、光と影の部分が際立っている。人間の心の光と闇を扱う作品の世界観に似つかわしい。
PR