ひきょたん!! 久遠まこと 角川書店 既刊1巻
高校1年生の秋に境来学園に転校した東圭太は、同じクラスの女子生徒、七瀬未来、倉崎彩花、夏木香奈らに誘われて、秘境探検部に入部する。秘境探検部の活動は、身近にあるけれども誰も踏み込まない場所を探検すること。同級生の家、夜の学校、街中にある「黄金郷」… 未知の「秘境」が彼らを待ち受ける。
表紙を見て、驚く人も多いはず。完璧に『涼宮ハルヒの憂鬱』を意識した表紙。実際のキャラクターも、涼宮ハルヒそっくりの七瀬未来、長門有希のそっくりさんの夏木香奈、そして、キョンのような立場の東圭太。恐るべし。下手をすれば、単なる二番煎じ、パクリと酷評される可能性と常に向き合いながらの執筆は、作者にとってハラハラドキドキの大きな挑戦になるはずだ。作者自身、秘境探検部と同じく、未知の領域を貪欲に求めるという使命を背負っている。
一方、読者の楽しみは、作者のそのようなライン際のせめぎ合いを見守ることにある。同じタイミングで角川書店から『てんかぶ!』の1巻を出した井冬良の販促コメント、「『ひきょたん!!』を読む事、それがすでに秘境探検です!」は、言い得て妙。
現在の展開は、ギャグ路線に、お色気描写を添える形。身近に潜む謎を「秘境」と名付けて楽しむスタイルは、ばかばかしいと思いつつも、楽しめる。この先、どのようにして読者を飽きさせない工夫が見られるのかが鍵。七瀬未来のボケが中心のギャグと、女子の下着描写で進む物語に未来はあるのか。そして、『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物、朝比奈みくるや古泉一樹のそっくりさんは現れるのか。秘境探検部、作者、読者の秘境探検は、まだまだ始まったばかり。
PR