ナイトメア・ゴー・ラウンド 鈴見敦 スクウェア・エニックス 全2巻
大学生の三國蓬と、高校生の葛葉ヒロカは、幼馴染み。新聞部に所属するヒロカは、スクープを狙って町外れにある廃遊園地を蓬と共に訪れる。そこで、園長と名乗る少女と、くりすというぬいぐるみ男と出会う。記念品として贈呈された「悪夢の匣」を開けてしまったことをきっかけに、人々の悪夢を掃除するナイトメア・スイーパーに任命されてしまう。ナイトメア・スイーパーの目的など、細かいことは一切秘密にされたまま、蓬とヒロカは悪夢掃除に奮闘する毎日を送る羽目になる。
1巻では、2人がナイトメア・スイーパーとして悪夢を掃除するうちに、身近な人の意外な側面を知るという過程が主に描かれる。2巻では、園長とくりすの謎に関わる過去の事件が明らかになるとともに、遊園地を狙う華邑建設との戦いが描かれ、完結に向かう。
「ナイトメア」というと、何となく暗く、陰鬱な雰囲気が連想されるが、本作で圧倒的割合を占めるのは、コメディータッチの展開。それを基本とした上で、人間が心の奥底に秘めた人知れぬ想いや欲望がスパイスを添える。
後半の、過去が明らかになり、華邑建設の思惑、すべての発端となった夢魔の契約の秘密が明らかにされる展開は、まるで遊園地のジェットコースターのような速さ。場面が目まぐるしく切り替わりながら、やがてすべての分かれ道が1本の道に収束する構成は、緊張感がある。
適度に用いられた見開きの絵、デフォルメ画、ちょっと不気味な悪夢の世界など、作者の絵の良さが存分に引き出されている。前作
『Venus Versus Virus』を彷彿とさせるような、作者お得意のボブカットの少女や、セクシーキャラ、眼鏡美人も登場。思わずニヤリとされられる。
軽い流れの中にほろっとさせる部分もある作品が好きな人にはお勧め。シリアスになり過ぎず、ギャグ路線に固定することもなく、読みやすい作品。
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