この彼女はフィクションです。 渡辺静 講談社 既刊1巻
葉村裕里は、10年間自らがノートに設定を書き続けてきた理想の彼女「ミチル」を思い続けてきた。しかし、同じ学校に通う先輩である久住風子に恋したことをきっかけに、ミチルの製作を中断し、現実の恋に心を捕らわれていた。ある日、これまでミチルを書き溜めてきたノートを捨てる決心をした裕里は、創作の神が眠るという神社へ行く。突如訪れた嵐の後に現れたのは、ミチルその人だった。これまで書き溜めてきた設定をすべて反映したミチルは、裕里しか目に入らない。理想の彼女と現実にいる好きな人との間に揺れる裕里。果たしてこの恋の行方は。
マガジンの新連載作品。突如主人公のことを好きで好きでたまらない女の子がやって来る。これは、比較的ありがちな設定と言えるだろう。しかし、本作の面白いところは、人を好きになるということについて様々な問いかけをしている点だ。自分にとっての理想を現実化した完全無欠の人物に出会ったら、果たして人は本当に恋するのだろうか。「好きになる人=自分の理想(に近い人)」という図式は本当に成り立つのか。自分のことしか目に入らないと言ってやまない異性は本当に魅力的なのか。
絶対に好きになるはずはないと思っていた人間が突如魅力的に映り、恋心を抱くことは十分にある。一見魅力的に思えた人が、大して魅力的に見えなくなってしまうこともある。この辺りの不可解でいて人間らしい部分をどう扱っていくかによって、本作の行方が決まるかもしれない。
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