機械仕掛けのメルディーナ 宮ちひろ 双葉社 既刊1巻
最愛の両親を亡くして以来、人間からは距離を置き、機械にしか心を開かなくなった少女、メルディーナ。そんな姿を見るにつけ、人々はやがて彼女のことを「機械仕掛けのメルディーナ」と呼ぶようになった。彼女はある日、廃棄場で蟹のような形状をした巨大機械と出会う。まるで人格があるかのように接するロボットを、彼女は「マキーナ」と名付けた。しかし、マキーナは、かつてジラーニスクという街を丸ごと消し去った兵器であり、国の秘密機関が消去しようとしている代物であった。マキーナが動き出した時、マキーナに関わる人々とメルディーナによる物語の幕が開ける。
ロシアを舞台とした所謂「スチームパンク」作品で、作中では随所にロシア語の単語が登場するなど、作者のロシア語に対する造詣の深さを感じる。第1巻では、人間を拒むメルディーナと、そんな彼女と友達になりたいと言って近付く少女、アリサとのやり取りを中心に据え、周囲に蠢く陰謀が徐々に明らかになっていく。終盤では、マキーナを巡る謎が明らかになり、国家の特殊部隊員の復讐劇が描かれる。陰謀に巻き込まれる中、メルディーナ、マキーナ、アリサの仲は引き裂かれてしまった。
一瞬、誰が話しているのかわからなくなる、読みにくい部分があるが、出だしから作中世界にぐいぐい引き込ませる力のある物語進行だった。作画も、表紙の絵を裏切らない完成度。悲劇的で退廃的で、それでいてどこか儚い美しさを持った作品世界にマッチしている。2巻ではまた、どんなドラマが描かれるのか楽しみだ。
ちなみに、カバーを取ってみると、本編のシリアスな展開からは打って変わったパロディー漫画が描かれている。
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