VANILLA FICTION 大須賀めぐみ 小学館 既刊1巻
佐藤忍は、若手の人気作家。世界の破滅を救うために殺人を依頼する手紙を受け取った主人公が、殺人を犯していくストーリーの『虫くい』という作品で注目を浴びる。しかし、彼の人生は「太宰治」と名乗る青年と、謎の少女エリと出会うことにより、大きく変わる。太宰は、佐藤に対して、エリの保護者となり、世界の破滅を救うように依頼する。不死身で、世界の行く末を何もかも知っているかのように話す太宰。佐藤は、太宰の指令に従い、ある島の岬でエリとクッキーを食べるという、妙な目標を目指した逃避行を始める。
帯には、「1ページ先で何が起きるか、予想も出来ない」という煽り文が書かれている。それもあながち嘘ではないと思える作品である。佐藤の小説『虫くい』の映画版予告編で始まり、読者をはっとさせる衝撃的な冒頭、何でもない日常から、いつの間にか主人公が迷い込む殺人現場、突如訪れた太宰の死… 1度乗ってしまったら、もう降りられず、なおかつ一寸先の進路さえ到底予想のつかない展開は、まるでディズニーランドのスペースマウンテンのような物語と表現すれば良いだろうか。もちろん、おとぎの国要素は一切排除されているが。
ファンタジックな雰囲気を醸し出す表紙からはまるで想像できない、人間の心の暗部を描いている点も、本作の特徴。事故から太宰を殺してしまった佐藤が、遺体を隠蔽し、人を殺めた苦しみに苛まれる場面などが一例だ。
主人公2人の旅は、今まさに始まったばかり。佐藤の生きる現実が、まるで自ら書いた小説の筋と重なっていくように変化した。佐藤とエリの2人に待ち受けている結末とは一体…
PR