魔女の心臓 matoba スクウェア・エニックス 既刊2巻
妹から心臓を奪われ、不死の体となった魔女、ミカが、妹を探し、しゃべるランタンのルミエールとともに心臓を取り戻そうと旅を続ける物語。旅の途中で出会う人々との交流は、生と死の意味を問う。
美しい背景と可愛らしい作画の人物によって描かれる物語だが、物語の根底にあるのは、生と死の意味についての問いかけである。ミカが手にしているのは、不老不死の身体であり、同時に終わらせることもできない命である。いつか終わってしまう儚さを持っているからこそ、輝きを得られるのが命だとすれば、ミカの命は残酷なまでに輝きを失っているとも言える。また、自らは死ななくても、いつまでも年をとらず、命果てることがなければ、有限の命を持った人間達と長く関わることはできない。だから、魔女は転々と居場所を移し、旅をする宿命を背負っている。
そんな彼女と対比的に描かれるのが、物語中で出会う人々だ。2巻でミカが出会うのは、人間の生き血を得ることで同じく永遠の生を約束された人魚と若き次期司教、人狼に恋焦がれる人間の少女、自らの故郷を捨てたいと望むスラム街に暮らす少女だ。それぞれ、永遠の命、異なる者同士の共生、同じ場所に留まることの幸せと不幸が描かれるわけだが、これらのテーマは、やはり不死の体で旅をする魔女と対照的に描かれるゆえに、大きな感動を呼ぶ。
2巻の後半では、時間が巻き戻り、ルミエールとミカの出会いが描かれる。続きは3巻ということで、3巻の発売が楽しみだ。
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