詠う! 平安京 真柴真 スクウェア・エニックス 既刊3巻
平成の世から平安時代にタイムスリップしてしまった少年、藤原定家が、歴史上有名な歌人と出会うことを通して和歌を集めていく物語。定家は、小野小町、清少納言、紫式部、和泉式部ら、偉大な人物と出会い、和歌の収集を続ける。
1巻に続き、和歌に詠まれる心情や情景が目の前に現れてくるファンタジックな設定が生きる。在原業平対小野小町戦では、互いの詠む和歌の世界が周囲に大きく影響し、木々が花開いたり枯れたりする。まさに言霊を感じる名勝負だった。
清少納言、紫式部、和泉式部が登場する回は、彼女らの描き方がとても活き活きとしていた。流行やお洒落に余念のない清少納言に、根暗でオタクな女性として描かれる紫式部、周囲の男性を魅了するグラマラスな女性の和泉式部と、歴史上の有名人を現代風な解釈で再現していて、「今生きていたらこんな感じかもしれない」と思ってしまった。互いの作品を罵倒し合う清少納言と紫式部の会話も面白い。
毎回毎回、1つの歌の詠われた背景が物語を通して丁寧に説明されていて、百人一首に造詣のない自分にとっては嬉しい限りであり、またとても勉強になる。小野小町の歌など、場合によっては、表面的な解釈を先に紹介し、実は裏にはこんな想いが込められていたのであるという解釈が、定家の言祝ぎの能力を通して後で紹介されることもあり、登場人物達と一緒になって和歌の深淵に迫る喜びを味わうことができる。百人一首の教材としても優れていると思ってしまう。
今後の重要人物となりそうなのが、菅原道真と安倍晴明。怨霊となった道真と、陰陽師の晴明は、時代の命運を左右し、ひいては定家が現代に帰れるかどうかの鍵を握っていそうだ。
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