ムジカ かかし朝浩 幻冬舎 全2巻
19世紀のドイツ連邦ザクセン王国を舞台に、音楽家シューマンと天才ピアニストのクララ、友人のメンデルスゾーンらが刻む青春物語の完結巻。自由奔放なベルリオーズや悪魔のようなワーグナーなど、個性豊かな面々が出揃い、物語は華やかな展開になる。
学園ものではないのだけれど、この物語には努力、友情、挫折、成長など、おおよそすべての学園もの要素が揃っている。1つ1つのエピソードは青春グラフィティに相応しい珠玉のものばかりだ。特に、物語の終盤、ワーグナーの曲を何とか演奏しようと、メンデルスゾーンの天賦の才能、クララの類稀な技術、シューマンの研ぎ澄まされた感性など、それぞれが十分に持ち味を発揮して協力し合う姿は、時代を経ても変わらない、輝かしき青春の日々の1ページを眺めているようだった。
また、2巻から登場した2人の人物は、物語を盛り上げる上で本当に重要な役割を果たしていた。それはひとえに、2人の揺るぎない強さが、周囲の人間の心を動かしたからに他ならない。表向きは破天荒で自由を謳歌するように見えるベルリオーズは、内面には音楽家として生きるための強い志を持っているし、孤高の音楽家ワーグナーは、自らの曲を基にした演奏会を経て、孤高を貫く意志を固めていく。アウトローな2人を見たからこそ、シューマンも自分の目指す音楽が明確になり、それを追求する覚悟ができたのだろう。
まだまだ皆の物語を読んでいたかったが、2巻で物語は完結した。19世紀当時の音楽家の生き様がリアルに浮かび上がるのと同時に、社会背景まで楽しく学べる漫画で、本当に楽しませてもらったと思う。
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