魔女の心臓 matoba スクウェア・エニックス 既刊3巻
妹から心臓を奪われ、不死の身となった魔女、ミカが、しゃべるランタンのルミエールとともに旅を続ける物語も3巻を迎えた。時はミカとルミエールの出会いの物語へと巻き戻る。ルミエールの元の姿は、村の人々を襲う竜であった。竜退治を任されたミカだったが、思わぬ出会いで旅の伴侶を得ることになったのだった。
生と死の境界を生きる魔女の物語は、魔女のことを慕ってたまらないルミエールとの出会いの物語から始まる。人々を襲う竜は、たとえ人間と親しくなっても、人間の短い命と向き合わざるを得ない運命に苦しんでいたゆえ、永遠の生を受けた魔女に惹かれていく。そして、徐々にミカという存在そのものにも心惹かれていき、ランタンとして生きることを選ぶのだった。気丈に振る舞うミカも、心に寂しさを抱えることはある。久遠の命を得ることの辛さを1人で背負わなければならないのだから。しかし、その辛さを紛らわせることができるのは、心の交流だ。3巻では、その他にも人間とともに暮らすエルフなど、人間の儚い生と向き合うものたちが描かれる。失うとわかっているのに、なぜ心の交流を求めてしまうのか。エルフは語る。「寂しがりやなだけよ」と。
その他にも、旅の途中で出会う人々との温かい交流が描かれる。その1つ1つのエピソードが、人間はなぜ生きるのか、そして儚い命を持ったものが心を通わすのはなぜなのかといった、根源的な問いを投げかけるものだ。いつものことながら、切なくも心の奥がほんのりと暖かくなるような物語の数々だった。
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