スタンドバイミー 大羽隆廣 講談社 全2巻
20XX年、日本に向けて弾道ミサイルが発射され、日本は戦争の道を進むことになった。アメリカとの同盟関係も破棄され、もはや日本は自力で戦うのみとなった。徴兵制を導入していない日本では戦力が不足し、政府はやむなく学校から、志願兵という名目で強制的に兵を集めることとなった。神奈川県横須賀市の旧米軍基地付近にある県立日野高校にとっても、それは例外ではなかった。高校側は、何度か問題を起こし、退学直前となっていた問題児、宮本友也を戦地に送ることで密かにする。一方、友也というと、幼馴染みの伊藤ユキに密かな想いを寄せつつ、戦争のことなど大して気にせず、日々を過ごしていた。ユキの両親が他界して以来、2人は友也の母とともに、一つ屋根の下に暮らし、ささやかながら幸せな毎日を過ごしていた。ところが、友也が戦地に送られるという事実を知ったユキが、書類を書き換え、内緒で自らを戦地に向かわせることとなってしまった。為すすべなく、友也は訓練に励むユキを遠くから眺めるだけとなる。年末を迎え、ユキが家に戻れると思っていた矢先、ユキら志願兵が訓練を受ける駐屯地が爆撃される。友也は無防備にもユキを助けるため駐屯地に向かって駆けていく。2人の運命は如何に…
平和でいつまでも続くと思っていた毎日が突然、当たり前のものでなくなってしまったら、どうなるのか。それを戦争という題材を用いながら描いていく。設定に無理があると言ってしまえばそれまでかもしれないが、大胆な思考実験としての価値はあると思う。ニートは自衛隊に入って根性を叩きなおした方が良いなどと言われてしまう世の中だけに。
人間は、どうせいつかは死ぬ。それなのに、なぜ人は生きようともがくのか。友也は、好きな人とずっと一緒にいたいからというところにその回答を見つける。絶体絶命のピンチに追い込まれながらも、ユキと一緒にいたいという想いだけを頼りに、生きようともがく。その強い意志に、諦めかけていた他の自衛官が突き動かされる場面は、胸打たれる。
自分達が助かって生き延び、幸せという雰囲気に終始しない姿勢が良い。友也は、自分が生き残るために倒した敵兵が、自分よりも幼い少年であることを知り、衝撃を受ける。少年兵は、家族の写真を肌身離さず持っていた。友也は、戦争の不条理を痛感する。そして、友也は今まで世間にまったく無関心できた自分を反省し、自分にできることは何かと考え出す。
絵は奇麗で、それでいて迫力もある。もう少し連載が続いても良かった気がする。
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