月刊少女野崎くん 椿いづみ スクウェア・エニックス 既刊4巻
野崎梅太郎は、身長190cmで無骨な高校2年生だが、実は大人気少女漫画家であった。そんな野崎に憧れる佐倉千代は、思い切って告白するも、いつの間にか野崎のアシスタントになってしまうのだった。佐倉は野崎と関わるうちに、自分達の通う浪漫学園には野崎のアシスタントが何人かいることを知り、徐々に野崎と個性豊かなアシスタントに囲まれる日常を送ることになっていく。
宝島社の「このマンガがすごい!2014」にもランクインした注目作。1ページをまるまる使い、少女漫画のような作画を存分に楽しめる4コマ漫画である(実際に作者は他誌で少女漫画も連載している)。野崎のアシスタントである、御子柴、堀、若松、そして演劇部の鹿島、声楽部の瀬尾、担当の宮前、近所に住む漫画家の都など、どのキャラクターも非常に個性が強く、この人たちが集まるだけで、上質なギャグ漫画ができあがる。登場人物は基本的に真面目な人が多いのに、なぜかふざけたように見えてしまう行動が多発したり、本来の目標からずれた方向に進んでしまったり… ドタバタ劇を中心としたやり取りが笑いを誘う。第1話以降、基本的にラブコメから遠ざかっているのだが、たまに不意打ちのように訪れるラブコメ要素もあって、中身は盛りだくさんだ。
また、本書の魅力は漫画家の仕事自体も詳しく、かつコメディタッチに描いている点だ。漫画の登場人物の性格を設定する参考にクラスメイトを観察してみたり、レストランに行ったら参考資料にと写真を撮ったりといった、職業病とも言える行動から、スクリーントーンの知識、季節ネタの取り入れ方、担当とのやり取りといった事情に至るまで、本書を読んでいると漫画ができるにあたっての裏がよくわかって面白い。しかも、そのすべてがネタとしてギャグに昇華されているのだから、作者の才能には脱帽である。
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