このはな綺譚 天乃咲哉 幻冬舎 既刊1巻
此花亭は、夢と現の間に存在するという不思議な宿で、取り仕切っているのは人間の姿に似た狐である。本作は、主人公である柚を中心に、此花亭に起こるほのぼのとした出来事を描く。
狐のお宿の物語が約4年半ぶりに帰ってきた。仲居を中心にしたほのぼのとした作風は健在で、以前からの雰囲気が活かされているのが嬉しい。第3話「カメのおんがえし」は、浦島太郎物語のパロディーで、もし本当に浦島太郎のような出来事が起こったら、現実にはどんなことになるだろうかということを扱った笑い話。第5話「てのひら」は、最後にすべての謎がつながるミステリー要素を持った、これまでの天乃作品らしい雰囲気の話。その他の話も含めて、またこの作品を楽しめるんだという期待を感じさせられ、何とも幸せである。
一迅社の『百合姫S』では休載が続き、更には『百合姫S』が休刊となり、長い時が経っていた。作者のHPの情報によると、ハーレムものに変えるであれば連載を引き受けましょうという出版社はあったらしいが、あくまで当初の雰囲気を大切にしたいという意向を汲んでくれたのがコミックバーズだったらしい。これには感謝したい。
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