銀塩少年 後藤隼平 小学館 既刊2巻
高校生のマタタキは、幼馴染みのミライにずっと恋心を抱くと同時に、彼女の姿を写真に収めてきた。2人の仲は良い。だけど、恋人同士になろうという決意はできず、マタタキは日々を過ごしていた。一見平穏な日々は、少しずつ変化に向かって動いていた。ある日、写真を現像すると、撮影したはずのない、ミライがテニス部のコーチである大学生の幸田と結ばれている写真が浮かび上がってくる。そして、なぜか自分が死んでいる写真までも。マタタキは、未来を映し出した写真にショックを受けたものの、幸田に宣戦布告をし、何とか自分の未来を変えて見せると決意する。
未来を自分の手で変えようという王道ストーリーでありながら、主人公は不器用で控えめで、だけど自分の大きな目標に向かって進む強さは持ち合わせているという設定が、何とも現代にマッチしているように思う。特殊能力もなく、顔立ちも平凡な少年が、時に弱気に、時に強気に自分の未来と戦う姿は、共感を呼ぶのではないだろうか。さらに、恋のライバル、幸田は大学生。マタタキよりも一回り洗練された言葉遣いに、金銭力。それに加えてテニスの実力は、ヨーロッパ遠征に行くほど。主人公の弱さが際立つ。まざまざと力の差を見せつけられてしまう主人公は、自分の取り柄である写真に、ミライへの想いを託そうとする。
マタタキに好意を寄せる、クラスメイトの新見さんが絡んでくることで、主人公の周りに四角関係ができあがる。彼女は、本当にストレートに自分の想いを伝えてくる存在。ミライとは違ったまっすぐさがあり、魅力的である。「恋愛ってそんな…早い者勝ちなの?」という台詞は、ひたむきさと切なさの入り混じった印象に残るもの。
もちろん、マタタキの幼馴染みも、素敵な存在。活発で、優しさも併せ持つ。それぞれに一途で魅力的な登場人物によるやり取りは、青春の1ページを飾るのに相応しい。
結末は、ある程度は想像がつく。そこまでの過程がどうなるかが、本作の見どころになるだろう。
◎
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