ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 既刊16巻
生徒会メンバーは、3年生に進級。進級早々、2年次に転校してきた生徒の暴力事件が起こり、相変わらず忙しい日々を過ごす。1学期最大の行事、体育祭に燃えた後は、いよいよ新しい生徒会の選挙となる。さらに、品川大地が、入試のときに見たあこがれの女子生徒のそっくりさんを隣の青筋学園で見かけることになり、品川の恋心に灯がともる。
夏休み前までの数ヶ月の間でも、本当に様々な出来事が目白押し。体育祭は、これぞ高校生の応援団と思えるような、1コマである。品川は、運動神経から見ると絶対的不利にある赤組の団長に就任し、朝練、昼練、夜練と練習を指揮する。団長を務めるうちに、品川の中にあったリーダーシップが徐々に目覚めていったり、不良として怖がられていた2年生の北見が思わぬダンスの才能を発揮したりといった、ドラマも描かれる。ひたむきに努力する彼らの姿を見て、彼らの通う紋白高校に憧れを抱く人は多いだろう。
生徒会選挙を巡る攻防の過程では、紋白高校の入試における「不良枠」という秘密が明かされる。何と、入試の一部に元不良で真面目に頑張りたいという意志を持った生徒を優先的に入学させる枠があったのだ。あまりに突飛な設定でありながらも、現実にそんな学校があれば面白いなと思ってしまう。北見のように、周囲から「不良」というレッテルを貼られ、強がってながらも、本当はクラスメイトと友達になりたいと素直に願っている者もいる。反対に、一見普通に見えても、心の内に問題を抱えた者だっている。そんな彼らが、人と人が関わることによる相互作用を受け、自分の居場所を見つけていく姿は、微笑ましく、頼もしい。
最後に、忘れていたかのような恋愛という側面も扱われる。きっかけは、紋白高校の生徒会が隣の青筋学園に訪問して、特別授業を行ったこと。品川にインタビューを求めてきた、青筋学園の生徒会書記、水戸すばるは、品川が紋白高校の入試のときに出会った憧れの人物と瓜二つ。結局人違いに終わるが、水戸は、品川へ恋心を抱くことになる。
高校3年生になってから、話のスピードはダウン。短い時間内にも色々な事件が起こる。主人公達の過ごす時間の密度が濃くなり、時間がゆっくりと流れるようになったと考えれば、不自然なことでもないかもしれない。
▽過去の記事▽
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』PR