こどものじかん 私屋カヲル 双葉社 既刊8巻
若手の新人教師、青木大介と、担任を務めるクラスのおませな小学生、九重りん、りんの友達の鏡黒、宇佐美々との交流を中心に描いた物語。5年生に進級したりんは、大介と距離を置くことを決意したが、大介の熱意に動かされ、一緒に生活する、母親の従兄弟、レイジとの関係を変えていこうと決意する。
大介は、持ち上がりで5年生のクラスを担当。5年生を迎えたからといって、とりわけ大きな事件が起こるわけではない。しかし、5年生ともなれば、生徒達は心身ともに大きく成長する。それゆえに出てくる様々な問題に対して、奮闘していくことになる。特に感心してしまったのが、初潮・精通教育を行う場面。かつて、この分野をこれほどコミカルかつ真面目に取り扱った漫画があるのだろうかと思うほど。
これまでが、回想を通して個々の人物の家庭環境を描くなど、問題の所在を明らかにすることが主だったのに対して、徐々に問題の解決へと物語が進みつつある。各々が、自らの抱える辛い問題に立ち向かおうと、動き始めた。りんは、母の死後、愛情に飢えて自己犠牲的な生き方をしてきた自分を見直し、母親の従兄弟、レイジとの関係を変化させようと、大介と協力するようになる。一方、レイジも自分を見つめ直す機会を得るようになる。レイジが過去ではなく、未来と向き合う勇気を持つ鍵となるのは、同じような家庭環境で育っている、りんの同級生、美々かもしれない。また、同じく幼い頃、抑圧的な両親の下、苦しんだ経験を持つ白井先生は、自分の生育過程を教育者の視点から客観的に見つめ直すことを通して、やがて自分を解放することに成功する。周りよりも一歩早く問題の解決に辿り着いた彼女は、今度は恋愛のことで悩むようになる。
大介への恋愛感情を深めつつも、アプローチが滑稽な結果に終わってしまう、同僚の宝院先生の奮闘や、最近大介に甘えるようになってきた黒の姿など、微笑ましい場面も多々ある。ほのかな感動を受ける場面が多い中、絶妙なコントラストだ。次巻は、来年の1月発売予定。楽しみな展開を気長に待つ。
※過去の記事※
『こどものじかん(1)(2)(3)』
『こどものじかん(4)(5)(6)』PR