私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 谷川ニコ スクウェア・エニックス 既刊1巻
高校に行けば、自動的にモテモテの人生が到来すると思っていた黒木智子。しかし、現実は過酷だった。学校の人間とは話さない日々が続き、虚しさは積もるばかり。おまけに、中学時代に仲良くしていた友人も、高校デビューしてさっさと彼氏を作ってしまい… 現実を見下し、2次元の世界にはまったりと、イタい女子高生がヒロインの物語。
『男子高校生の日常』も然り、最近のスクエニ作品では、女子高生をイタい存在として描く漫画が密かに支持を得ているような気がする。本作は、切ない高校生活を送る女子高生が主人公だ。事務的なことで男子に話しかけられただけでドギマギしてしまうのに、少しでも自分に対する接し方が気に食わないと、徹底的に相手を見下す。卑屈なところがあるのに、男にモテる女子に対して否定的な態度を取る。2次元の世界の男性に逃げ込み、愛を囁かれて大興奮する。ある意味底抜けのナルシストなのだが、そんな自分を醒めた目で見るところもある。本作のヒロイン、黒木智子はそんな性格ゆえに、憧れの高校生活とは程遠い現実を生きる。
自分に対して未知なる無限の可能性を感じ、何かと周囲の人間を見下して自分を高みに置く姿勢は、ある意味若気の至りと言うべきか、多くの人が1度は経験する(あるいは現在まさに経験している)ことかもしれない。だからだろうか。本作を読んでいると、笑えるシーンは多いのだが、その笑いはどこかに怖さを秘めたもののように思えてしまう。
変なプライドなど捨ててしまえば、もっと周囲の人間と関われるのに。周りの人間の文句ばかり垂れていないで、自分を変えろよ。智子に対して、こんなことを言いたくなる人は多いだろう。しかし、人間はいつも前向きな姿勢を貫けるほど強くない。ふと後ろ向きな気持ちになったとき、主人公の姿に共感して愛しささえ感じてしまうこともあるのではないだろうか。きっと、本作の位置づけはギャグ漫画なのだろうが、笑いの1つ1つにずっしりとした重さがある。