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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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ヤンデレ彼女 忍 スクウェア・エニックス 既刊3巻



不良として恐れられる竜崎レイナと、秀才の田中学の高校2年生カップルが、友情に、恋愛に、そして(結果としての)お笑いに奮闘する漫画の第3弾。

時にお笑い、時に甘々のラブコメタッチの雰囲気は、相変わらず。2人がぶつかってしまうことで、人格が入れ替わってしまうという、第18話「チェンジ、それは俺がお前でお前が俺で」のような、どっかで見たような定番ネタもちらほらだが、今回は、これまでの登場人物達を活かす方向で進む話が多い。田中の妹、真夜美のドMキャラにはさらに磨きがかかる。田中のクラスメイトで皆からスルーされてしまう白鳥は、その役割を強化されてしまうかのように、さらにかわいそうな扱いに。また、コスプレマニアである、レイナのバイト先の店長が、実は大変なイケメンであったことも発覚。

この作者が巧いのは、田中とレイナの家族設定。不良として名を馳せるレイナの家族は、ヤンキー出身の母と、対人恐怖症だが誠実な父。一方、真面目で地味な田中には、ちょっとばかりアウトローな雰囲気の祖父。田中とレイナは一見真逆の道を行く2人に思えても、お互いの家族を考えると、2人が好き合うようになるのも必然に感じられてしまう。

趣向を変え、登場人物達に「シンデレラ」を演じさせてしまう、第21話「シンデレラ、それは幸せの在り処」など、飽きさせない工夫も。ストレートに楽しめる話が多くなったところが好印象か。


○過去の記事○
『ヤンデレ彼女(1)』
『ヤンデレ彼女(2)』
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ナイトメア・ゴー・ラウンド 鈴見敦 スクウェア・エニックス 全2巻



大学生の三國蓬と、高校生の葛葉ヒロカは、幼馴染み。新聞部に所属するヒロカは、スクープを狙って町外れにある廃遊園地を蓬と共に訪れる。そこで、園長と名乗る少女と、くりすというぬいぐるみ男と出会う。記念品として贈呈された「悪夢の匣」を開けてしまったことをきっかけに、人々の悪夢を掃除するナイトメア・スイーパーに任命されてしまう。ナイトメア・スイーパーの目的など、細かいことは一切秘密にされたまま、蓬とヒロカは悪夢掃除に奮闘する毎日を送る羽目になる。

1巻では、2人がナイトメア・スイーパーとして悪夢を掃除するうちに、身近な人の意外な側面を知るという過程が主に描かれる。2巻では、園長とくりすの謎に関わる過去の事件が明らかになるとともに、遊園地を狙う華邑建設との戦いが描かれ、完結に向かう。

「ナイトメア」というと、何となく暗く、陰鬱な雰囲気が連想されるが、本作で圧倒的割合を占めるのは、コメディータッチの展開。それを基本とした上で、人間が心の奥底に秘めた人知れぬ想いや欲望がスパイスを添える。

後半の、過去が明らかになり、華邑建設の思惑、すべての発端となった夢魔の契約の秘密が明らかにされる展開は、まるで遊園地のジェットコースターのような速さ。場面が目まぐるしく切り替わりながら、やがてすべての分かれ道が1本の道に収束する構成は、緊張感がある。

適度に用いられた見開きの絵、デフォルメ画、ちょっと不気味な悪夢の世界など、作者の絵の良さが存分に引き出されている。前作『Venus Versus Virus』を彷彿とさせるような、作者お得意のボブカットの少女や、セクシーキャラ、眼鏡美人も登場。思わずニヤリとされられる。

軽い流れの中にほろっとさせる部分もある作品が好きな人にはお勧め。シリアスになり過ぎず、ギャグ路線に固定することもなく、読みやすい作品。
PandoraHearts 望月淳 スクウェア・エニックス 既刊11巻



15歳の成人の儀式の最中、バスカヴィルの民と呼ばれる者らに襲われ、アヴィスという監獄に落とされたオズ=ベザリウスは、アリスという少女と出会い、契約を交わすことによって、地獄から抜け出す。
謎を追い求めて向かったかつての首都、サブリエから帰還したオズ一同。バルマ公の情報を基に、過去の謎を解くために、トール村へと出向く。オズは、先祖のジャックが残した小箱を受け取り、事が円滑に運んだと思われたとき、過去にも起こったとされる、謎の首狩り事件が発生する。

謎の多い本作も、徐々に過去の事実が判明し、各人の思惑も少しずつ輪郭をはっきりさせてきた。そんな中、オズとその従者、ギルバートが心の奥底に仕舞い込んでいたはずの暴力性が、確実に頭角を現してきた。それは、悲劇の序章となるのか。それとも、2人は運命に抗い、過去の因縁から解き放たれることができるのか。

『PandoraHearts』には、表面上は平静を貫き、穏やかな様子を見せることに長けていても、内面には怒り・憎しみ・悲しみといった強い感情を抱きながら、日常を生きる人物が多い。しかも、その烈しい感情は、100年も前の出来事に起因する。過去の人生の跡が尾を引いて歪んだ性格となった者、達観した者。それぞれの目に映る世界はどんなものだろう。過去の人生に囚われる彼らにとって、「自由」や、「自らの意思」といった言葉は、意味を成すのだろうか。


◇過去の記事◇
『PandoraHearts (1)~(10)』
E'S 結賀さとる スクウェア・エニックス 全16巻



第3次世界大戦を経た世界は、国家の力が弱体化し、代わりに企業が人々の生活に大きな影響を及ぼすようになった。このような時代の中、新興企業「アシュラム」は、突然変異によって生まれ、人々の恐怖の対象となっている超能力者を集め、巨大企業として支配を広げようとしていた。「アシュラム」の特殊能力者部隊に所属する戒=玖堂は、スラム街を形成する土地、ガルドでの任務中に仲間と戦闘になり、倒れているところを勇基=篤川と明日香=篤川の2人に救われる。3人で生活し、便利屋である勇基のもとに舞い込む仕事を通して、ガルド内で起こる事件に関わっていくうちに、戒は自らが所属していた「アシュラム」のやってきたことに疑問を覚えるようになっていく。ガルド地区で支持を得て、次期教皇を狙う枢機卿ギベリーニ、旧教皇マルティヌス14世の下に集まったゲリラ、巨大企業アシュラムの指揮官、曳士=鷺宮、その配下で働く人々、それぞれの思惑が複雑に絡み合う中、物語は進む。戒は、「アシュラム」に妹の光流を人質として取られていた。戒と光流をめぐる謎が徐々に解明され、戒が過去の記憶を取り戻したとき、世界は破滅へのカウントダウンを始める。足掛け12年の長期連載は、現在のところ「月刊Gファンタジー」の最長記録。連載当初の中高生が30歳に近づいていることになる。エニックス時代から続く漫画が完結を迎えた。

物語は、初めの部分が掴みづらい。時と場所の変化が多く、それぞれの人物がいったい何を求めているのかが、はっきりとしてこない。しかし、途中からある程度物語の設定がわかるようになってくると、どんどん引き込まれていく。権力闘争の裏に隠された、能力者の苦悩、生きる意味への問い、人間の身勝手さについて考えさせられる。人間が、能力者を恐れながらも、自らの美しさと寿命を維持するために能力者の身体の一部を移植したり、傭兵として能力者を使用しているという現実など、随所で語られる能力者差別の描写は、異質の者が生きる意味について問いかけるものである。

登場人物たちも、それぞれが非常に魅力的である。主人公格の戒に、独自の哲学を持ちながらも人情にも厚い勇基、最後までぶれない魅力的なヒロインだった明日香、中盤からこれまた魅力的なヒロインとなるマリア、最後まで孤高を貫くこととなった「アシュラム」の最高指揮官である曳士、悲運を辿ることとなったベルヴェディア姉弟、生きる意味を見出そうともがいたマキシム。皆の思いが様々な場面で描かれ、物語を大きく盛り上げていく。

物語の終盤では、主人公である戒の現実世界での戦いと地球の行く末がシンクロする展開の中、ガルドの持つ意味、戒の妹の光流の存在の謎が明かされる。光流が関わった人物はすべて狩ることで自らの責任を果たそうとする戒は、次々と「アシュラム」の人間を倒していく。第1巻からいた人物も多く、各々の散り際は涙なしには読めない。

絵が非常にうまいのが本作の魅力。綺麗な絵の中に時折入り混じった崩した絵も、けっして手抜きに見えず、全体とバランスを取りつつ効果的にコミカルなシーンの演出に一役買っている。戦闘シーンの迫力もありながら、繊細な心理描写も忘れない。もう1つの特徴が、豊富な語彙。登場人物の台詞やト書きに出てくる言葉から、作者の文才が覗える。

文学的にも、旧約聖書、精神分析、エディプス・コンプレックスなどなど、分析のネタは豊富にある。難解なストーリーと並んで、読み応えがある。とは言いつつも、私もまだまだ理解が十分でないところが多いのが現状である。
勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 既刊4巻



子ども嫌いの中学教師、仁岡が、真面目な自称不良の浅井や、10年以上昔の流行感覚を持った自称最先端ギャル今江、かわいい人好きの女教師の河原、どうしようもない校長とともに繰り広げる、破天荒なギャグ漫画の第2弾。今回は、これらの面々に加え、またも個性的な新キャラが2人登場する。

今までひたすらツッコミ役に徹してきた仁岡が、良い意味でキャラを崩してきたのが、今回の見どころ。「ガキを滅ぼす」という、お決まりのの大義名分を抱えつつ、彼はいつの間にか球技大会にのめり込んだり、冬休みの宿題で生徒を苦しめようとして、サンタの格好をして滑ってしまったり・・・「本当のところアニキは誰よりもガキ」と、仁岡のことを言う浅井の言葉には、恐ろしいほどの説得力がある。

さて、そんな中学校に新たな英語教師が赴任する。何と、この学校には1年ほど英語教師がいなかったらしい。このような驚くべき事態にも、もはやそれほど驚きを感じなくなってしまった自分は、この作品の勢いに乗せられ、感覚が麻痺してしまったのだろうか。その教師の性格がまた、本作において非常に良い味を出しているように思う。彼は河原の弟で、姉と同様に中学生の純粋さに惚れ込むも、恋愛関係にまでは進展させるつもりはないと断言する。それは、どんなに美しい中学生の心も、自分の美しさには敵わないという、ナルシストな思考に由来する。善と悪、大人と子どもといった二面性が仁岡の特徴なら、英語教師、河原梅夫は、通常と狂気というさらに強烈な二項対立を内包した人物である。狂気が1周することで行き着く先は、曲りなりのノーマルなのである。

もう1人の新キャラが、仁岡のクラスの女生徒、前田だ。彼女は、中学生当時の仁岡を彷彿とさせる性格の持ち主。ひねくれ者の仁岡を上回るひねくれぶりを見せつつも、人付き合いが苦手で憎めないところがある。

その他にも、バレンタインデーの話では、今まで強さのみが強調されがちだった河原が、乙女な一面を見せるなど、笑えてかつ魅力的な話が多い。ちなみに、新キャラ登場ラッシュの中、ヒロインのはずの浅井の存在感がやや薄れがち。反対に、影響力を増していくのが上原。今後の展開はいかに・・・


★過去の記事★
『勤しめ!仁岡先生(1)』
ヤンデレ彼女 忍 スクウェア・エニックス 既刊2巻



しばらく更新していなかったものの、ここまでの間に300アクセスを突破しました。ありがとうございます。

ヤンキー×デレで「ヤンデレ」のギャグ漫画。前巻から4ヶ月で出た、第2巻。ドラマCD化も決定したという。

作者曰く、「サザエさん的な時間の因果律」(季節が過ぎ去ってもキャラクターは歳をとらない)が適用され、前の巻ではバレンタインデーの企画があったにも関わらず、今回は主に夏の企画が掲載されている。また、新キャラとして、強面でいて弱気なレイナの父親も登場。

今回は、前回と比べて、さらにメタなネタが多くなったように思う。例えば、プールのシーンで、水泳帽は絵的にあり得ないといった話など。
田中の妹、真夜美が痛み(=快感)を求めてレイナにちょっかいを出すのは相変わらず。そして、影が薄いのに頑張ってでしゃばる白鳥(このキャラは、作者のギャルゲ経験が基になっているらしい)も相変わらず。新たに登場する、レイナのライバル校の背の小さな不良や、バイト先の変態店長などのキャラクターは、レギュラー化するのだろうか。このパターン、これからどう発展させていくのかが、連載の続く重要なポイントになりそうな気がする。

その中で、目を惹くのは、レイナの父、竜崎紅一郎のキャラクターだ。強面なのに真面目で、実は対人恐怖症の教師。見た目の怖い人物が、「僕にはできるだけ話しかけないでくれ」と言うものだから、ますます生徒の恐怖心を煽ることになってしまう。田中との絡みも、楽しみ。また、レイナの母、蘭との関係は、田中とレイナの未来を想像させる、ちょっと微笑ましいものになっている。
そして、いつもはクールな田中が、レイナの水着姿や浴衣姿のを見るとなると、いきなりテンションが上がるシーンも多く、田中の二面性がよく現れていている。
恋することの魅力が伝わってくる雰囲気は健在。ギャグの側面を盛り上げつつ、物語がどう進むのか、今後の展開が見どころ。


▲過去の記事▲
『ヤンデレ彼女(1)』
シューピアリア・クロス ichtys スクウェア・エニックス 既刊1巻



人間と魔物が戦う世界に生きる勇者、エクサは、魔王討伐に立ち向かおうと決意する。魔王、シーラは、生きるものを殺すことに疑問を持つエクサの生き方に興味を持ち、自らの正体を隠して勇者と共に旅を始める。ところが、旅を続けるうちに、勇者への恋心が芽生えていく。本来の敵同士が繰り広げる、禁断の恋の物語。

圧倒的な画力が魅力なのが、この作品。エクサとシーラの関係だけでなく、人間と魔物のクォーターのアンジェリカや、貧乏育ちのラクシュリなど、自らの出自に苦しむ人物が多く登場するという特徴がある。生まれという、変えられない宿命とどう向き合っていき、自分をどう受け入れていけば良いのかという点が、作品の重要テーマのひとつとなるだろう。この巻では、魔物の血が入っているゆえに人間に虐げられてきたアンジェリカが、祖父である魔物と出会う話が切ない。

そして、本筋である、勇者と魔物の恋の行方はどうなるのだろうか。シーラは、いちいち完璧な勇者に対して好意を抱く一方、悩みをひとりで背負いこみ、皆の前では完璧な勇者であろうと努めるエクサの姿を見て、相手の格好悪いところも含めてすべて受け入れたいと密かに思う。エクサも、徐々にシーラへの想いに気付きつつある。2人の行く先に待つのは、明るい未来か、それとも悲劇なのか。今後の展開に注目していきたい。
PandoraHearts 望月淳 スクウェア・エニックス 既刊10巻



15歳の成人の儀式の最中、オズ=ベザリウスはバスカヴィルの民と呼ばれる者らに襲われ、アヴィスという監獄に落とされる。オズは、そこでアリスという少女と出会う。地獄から抜け出すために、オズはアリスと契約を交わし、アリスに力を貸すことを誓う。オズは無事地上に戻ったように思ったが、実は元の世界では10年の時が流れていた。2人は、バスカヴィルの民の謎を追うパンドラという組織の一員、ブレイクらに捕らわれてしまう。ブレイクは、オズがバスカヴィルの謎を解く鍵であると考え、共に行動することを提案する。また、アリスは地上に散らばった自分の記憶を取り戻すために、オズ、ブレイクに協力することを決意する。そうして、オズ達の冒険が始まる。しかし、オズにはタイムリミットがあった。オズの胸には、アリスとの契約時にできた刻印があり、その針が時計の針のように一周したとき、契約者のオズは再びアヴィスに落とされるという。すべての謎が解明されるのが先か、オズが地獄へと落とされるのが先か。さらに、すべてが明るみに出たときに待っているのは、希望か絶望か…

「パンドラ」「不思議の国のアリス」の言葉に惹かれ、読み始めた作品。そして、ちょうど興味を持ってからしばらくしてアニメ化されたという、自分にとって思い出深くなりそうな作品。

謎に告ぐ謎の連鎖で、次々と伏線が張られていくのが本作の特徴で、しばらく読んでいかないとわからない。8巻、9巻辺りから徐々に謎の解明という意味での物語は進み出したように思う。今のところ、どんな風に転がっていくのか想像がつかない状態。
確かに、これまでの展開で、いくつか山場はあり、その中でメッセージが発せられることはあった。しかし、全体としてはストーリーを追っていくという楽しみ方に向いている作品ではないかと思う。登場人物達は、皆過去に何かしらの傷を負い、心の奥底に封印してしまっている記憶を持つ。オズとアリスがその記憶を求めようと奔走することで、他の人物の抑圧されていた記憶も徐々に甦っていく。それぞれの過去の経験が判明していくにつれ、悪者を簡単に悪者と言い切ってしまうことができなくなる。それぞれの人物が自分の記憶とどのように向き合っていくのかが、今後の展開の鍵を握っていそうだ。また、オズと父親との確執も、本作の重要テーマ。抑圧された記憶と合わせると、精神分析的な要素が好きな人は楽しめるかもしれない。

本作の特徴は、オズが様々な人と出会うことによって、自分の考えを深め成長していくという少年漫画的な要素と、美形の男が次々と現れてくるという女性向きの要素が入り混じっているところにある。これは、ガンガン系ならではの魅力ではないだろうか(詳しくは、<Gファンタジーの異色の方向性>参照)。

初めから、作画が非常に綺麗で、世界観がよく出ていると感心していた。背景も、手抜きなく描かれているのが素晴らしい。巻が進んでいっても、その良さは相変わらずなのが魅力。結構シリアスな展開の中、所々にデフォルメされた絵によるギャグも入っていて、バランスを取っている。特に、シリアス展開が増えている最近は、各話扉絵の次のページやカバー下のおまけが、本編とは違った方向へ暴走している。単行本自体おまけが充実しているにもかかわらず、毎回40ページ前後と非常に速いペースで連載が進んでいるゆえに、ほぼ4ヶ月に1回という刊行ペースが維持されているのは驚き。2006年に第1巻が発売されて以来、ついに2桁台突入となった。今後も注目していきたい作品。
勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 既刊4巻



主人公、仁岡隆志は、子どもが嫌いな中学教師。いつか子どもを滅ぼそうと企んでおり、宿題や補習といった手段によって生徒を苦しめることに喜びを見出す。しかし、仁岡の勤める学校は、変な人間ばかり。不良を気取った真面目キャラの生徒、浅井。その浅井をかわいいと言い、浅井に不良キャラを演じさせておくクラスメイト。イマドキを意識しつつも、逆に現代から取り残されているような生徒、今江。男女問わずかわいい生徒に対して異常な執着を見せる女教師、河原。かわいい女生徒と恋愛しようと奮闘する校長。
そして、中学生や同僚になど興味のない仁岡が、浅井、今江、河原に惚れられて… 学校を舞台にしたドタバタ劇が始まる。

4コマ漫画としては、非常によくできている。仁岡以外の人物達の、勘違いに次ぐ勘違いや、会話をとんでもなく飛躍させた受け取り方、それに対する仁岡のツッコミが、この漫画の生命線と言えるだろう。それでいて、各4コマが繋がって1つのストーリーを作っているところが驚き。

また、本作のもうひとつの面白さは、善と悪といった二項対立的な性格がひとりの人間の中に並存しているところである。
[善と悪]仁岡の性格は、本当に屈折している。中学時代を勉強に捧げ、友人と呼べる者とも出会えなかった。それゆえに中学生を憎んでいる。仁岡は、子ども嫌い、子どもを滅ぼすだの、一般的には批判されそうなとんでもない性格を持った教師である。しかし、生徒が熊に襲われそうになったときには、自分が囮になって生徒を助けようとするし、河原がかわいくない生徒を拒否したときには、「確かに僕はガキが嫌いです …ですが差別はしません 全てのガキを等しく嫌ってます」と、言ってみせる。何と真っ当な教師であろうか。特に、浅井がかわいいと堂々と公言し、生徒との恋愛に躊躇しない校長と仁岡とのやり取りを見ると、仁岡が教師としてまともな人間に見えてくる。
[良い子と不良]一方、生徒はというと、自称不良の浅井は、宿題をきちんとやったり、人知れず夏休み中の教室の掃除をしたりする、びっくりするほどの優等生ぶりも発揮する。
[新と旧]今江の言葉は、現代風のしゃべり方の上にかつての流行語を取り入れた形になっている。
[真面目と不真面目]普通の生徒として現れる上原は、勉強はサボるし、辺り構わぬ毒舌ぶりを発揮する。それでいて真面目なところもある。
教師とは何か、不良とは何か、普通とは何か。そんなことを考えてしまう(これは単なる深読みか?)。

単行本が出るペースが遅く、2006年に第1巻が発売されて以来、2009年の夏時点で4巻まで。
ZOMBIE-LOAN PEACH-PIT スクウェア・エニックス 既刊12巻




紀多みちるは、友達の使い走りにされてしまうような、気弱な高校生。両親を亡くし、親戚の家に引き取られた。実は、死者や死ぬ間際の人間の首に、黒いリングを見るという特殊な能力の持ち主でもある。しかし、本人は眼鏡を掛けることで、その能力を封印していた。ある日、ひょんなことからみちるは、同じクラスの橘思徒(シト)と赤月知佳(チカ)の首に黒いリングを見てしまう。みちるの特殊能力を知った2人は、その能力を彼らのバイトに利用しようと決める。彼らのバイト先は「Zローン」。「命の融資」を行うところ。実は、シト・チカの2人は、事故で1度死んだところを、Zローンとの契約で救われたゾンビであった。2人は、Zローンとの契約によって多額の借金を抱え、その返済のためにそこで働いているのだった。そんなこんなで、2人の少年と1人の少女の物語が始まる。
アニメ化もされた作品。

本作のテーマを一言で表せば、命ということになるだろう。2人の少年は、ともに生と死の境目のゾンビという形で存在する。それでも2人は生を手に入れようともがく。それに対して、みちるは生に対するこだわりが薄い人生を送り、後に考え方が変わる。チカの友人の芝は、生に絶望し、それでいて生にしがみつくという矛盾を生きる人間として描かれる。さらに、不老不死を求めるマッドサイエンティストによって作られた、魂を持たないゴーレムの少女、不老不死を願う老翁など、命とは何かと考えさせる場面が多い。

本作の特徴には、哲学的な概念や、古来の伝説を多く取り入れて物語を構成している点がある。例えば、哲学的な概念としては、アカシック・レコードや、シュレディンガーの猫がある。伝説としては、始皇帝の命を受けて不老不死の薬を求めたという徐福、黄泉の国から帰るイザナギの話などが挙げられる。他には、独特の精神世界の描写が多いのも特徴である。作者の創作に対する意欲が感じられる作品だ。PEACH-PIT作品の中では、初めて単行本が2桁台に乗った作品である(その後『しゅごキャラ』が10巻を突破)。物語も佳境に入ったように思われるだけに、このまま良い形で連載が続くことを願う。


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