ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 全23巻
品川は見事殿様大学に合格し、晴れて大学生活を迎えることとなる。仲間達も無事志望大学に合格し、それぞれの進路が決まった。一方、足立花の行方はわからず仕舞いで、ついには元生徒会長不在のまま卒業式の日を迎えることとなる。花の代わりに答辞を任された品川は何を語るのか。ヤンキー君達の高校生活の集大成とその後の様子が描かれた最終巻。
予想に反して、大学編に突入せずに最終話を迎えた本作。現生徒会、パソコン部、揚羽工業高校のメンバーなど、これまで関わってきたサブキャラが総出で、以前からの読者は懐かしさを感じる最終巻であったように思う。
「メガネちゃん」こと足立花が不在のまま物語は一応の完結を迎え、彼女の秘密はとうとう明らかにされることはなかった。これは、作者が選んだ結末であると同時に、品川自身の選択でもあろう。
本編が終了した後の「LHR 1」「LHR 2」では、高校卒業から4年後の様子が描かれる。そこで明かされる、それぞれの近況が面白すぎる。最後まで楽しませてくれる内容だった。そして、最後の最後で、品川と花はまさかの再会をする… 品川先生と、足立花。この組み合わせは、そういえば1巻で品川が妄想していた内容で、1巻が伏線だったかのように思えてしまった。おそらく、それはただのこじ付けだろうが。
完結を機に、本作の全体について考察してみる。本作の魅力は、どんなところにあるのだろうか。それはひとえに、ヤンキー君が1人の女子生徒との出会いをきっかけに、学校生活に目覚め、仲間と過ごすことの尊さを知っていく過程にあろう。かつては有名進学校に在籍していた生徒は、1人でトイレに籠もって勉強する生徒であった。学校を退学になってからは、日々通う学校は退屈な空間でしかなく、級友達は皆くだらない奴にしか思えなかった。そんな生徒が徐々に学校という世界に自分の居場所を見つけ、かけがえの仲間に出会い、成長していく。その姿に勇気をもらった人は多いのではないかと思う。卒業式の答辞で高校生活を振り返った品川が思わず流した涙が、品川の3年間の変化を物語っている。そこに、少年漫画に相応しい非常にプラトニックでピュアな恋愛描写と、少年漫画の王道とも言えるようなバトル要素が組み込まれているのも、人気の秘密だったのかもしれない。
すなわち、本作は、高校生活という青春の1ページを極めて少年漫画的に描いた作品だったと考えられる。ライトノベルに描かれるような、実現不可能な高校生活ではなく、もしかした自分にも訪れるかもしれない、あるいは訪れていたかもしれない高校生活に、思いを馳せながら本作を読み続けた読者も多かったのではないだろうか。
■過去の記事■
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』『ヤンキー君とメガネちゃん(9)~(12)』『ヤンキー君とメガネちゃん(13)~(16)』『ヤンキー君とメガネちゃん(17)(18)』『ヤンキー君とメガネちゃん(19)』『ヤンキー君とメガネちゃん(20)』『ヤンキー君とメガネちゃん(21)』『ヤンキー君とメガネちゃん(22)』PR