zen zen 槙ようこ×持田あき 集英社 既刊1巻
高校生、古瀬哲は交通事故で兄の直一を亡くしてしまう。兄が遺したのは、「古瀬学習塾」という塾だった。直一はイケメンであったゆえに、塾に集まっていたのは兄狙いの女子ばかりであった。兄の死を機に塾を閉鎖するつもりだった哲だったが、そこに集まる同年代の女子が内面に抱える問題や、兄が生徒に対していかに真剣に向き合っていたかを知り、自らの手で塾を存続させることを決意する。
ヘタレ高校生と、そこに集まる大勢の女子という、少年漫画の王道ラブコメストーリーのような設定を少女漫画に持ち込むとどうなるのかという点で、非常に興味深い作品である。今のところは、恋愛要素が入るというより、少女の内面に向き合おうとして真摯になる哲と、その姿に徐々に心を動かされていく少女たちという展開。意外と勉強に対しても真面目で、三角比を使って、今見ている花火がどれくらいの距離にあるのか測ろうとするエピソードなどもある。
何となく心にぽっかりと穴が開いたような気がして、居場所を求める気持ちを持っていたのは、何も少女達に限ったことではなかった。哲も同じだった。一見わがままで自分勝手な生徒と張り合う中で、時に哲自身も励まされ、希望をもらうこともある。教師と生徒という関係であっても、同年代ゆえに、哲は上から目線でものを言うことはない。ただひたすらに、自分の思いを不器用にぶつけ続けているのだが、その声が彼女達の心の叫びに応えられる瞬間があるのだ。
縦の関係ではない、横の関係でもない、斜めの関係こそが、現代社会で孤独を感じる若者にとって必要な関係なのかもしれないと思ってしまった。
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