ホーカスポーカス 倉薗紀彦 メディアファクトリー 全2巻
エンターテインメントに関わる人材を多く輩出する高校として名高い、総合エンタメ学園。学園のマジック科に入学した柏木ミノルは、有名マジシャンの孫、ハルカ・ヴァーロンに出会う。基礎的なマジックを地味だと否定するなど、高飛車なハルカに対して、クラスの生徒は反感を持ち、結局ミノルだけがハルカの友人として関わり、日々振り回されることになる。
2012年は、倉薗紀彦の作品が3作品もリリースされた年となった。本作は、『コミックフラッパー』に連載された作品で、約1年間の掲載を経て最終回を迎えた。
ラブコメ要素はあるものの、全体としてはマジックの面白さ、演じる者に求められる姿勢などについて考えさせられる内容である。特に、各登場人物が、自ら抱える悩みとどう向き合い、自分なりの道を切り開いて行くかというテーマが中心にあり、青春物語として楽しむことができる。主人公のミノルは、幼い頃に超能力少年として一世を風靡したが、後に週刊誌が嘘を暴いたことをきっかけに、一気に芸能界を追放された人物。ハルカは、有名マジシャンの孫ゆえに、出来損ないの3代目というレッテルを貼られ、マジシャンを目指す自分の気持ちに疑問を抱いていた。後に学園内のマジックショー出演を目指して共にチームを組むことになる巴、霧谷も然り。巴は、幼い頃天才和妻少女として名を馳せたが、客を惹き付けられない自分の演技に対して自信を失い、やめてしまった過去を持つ。霧谷は、抜群の腕を持ちながらも、喋りが苦手で高い評価を得られないでいた。
道に迷う4人は、学園内のマジックショーに出演するためのオーディションを通して、徐々に自分の良さ、それを引き出してくれる仲間の大切さに気付いていく。仲間の支援のもと、自分が持つ実力を発揮していく霧谷。自分のマジックにエンターテインメント性がないと否定されたのを機に、1度は捨てた和妻を取り入れた独自のマジックを構築していく巴。自らのプライドを捨て、マジックの基礎を身に付けようと決心するハルカ。そして、かつて「一発屋」と罵られた自分の過去を、ネタにするまで昇華させることのできたミノル。
しかし、打ち切りの話が出たのか、終盤は加速度が増し、肝心のミノルとハルカの成長を描いた部分は駆け足での終了となった。この部分を丹念に描いて、3巻位で終幕となれば、大分違っていたと思うだけに残念。
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